約 187,710 件
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2642.html
『13km』-1/3 これから君に戦ってもらうのは、君のようにテンプレートに沿った改造をなされた神姫とはワケが違う。 七人が七人とも天下無双の変わり種だ。 いや、決して君の悲願達成の障害を強固にしようというわけではいよ、本当だ。 神である僕が神に誓ってもいい。 何故かって君、ありきたりな武装でありきたりな攻撃をしてくるありきたりな神姫なんて、いくら倒したところで何の御利益もないと思わないかい? つまり君の願望はそれほど、普通じゃないということさ。 恨むなら自分のそれを恨むんだね。 しかし相手が普通じゃないということはある意味、君にとって幸運と言えるのかもしれないぞ。 あくまで凡百レベルでしかない君が、例えばだが、全武装神姫の上位互換であるアラストールやキュクノス、それにジャスティスに勝てると思うかい? そう睨むなよ、君に限った話じゃない。 他の神姫だって、特別なものを持っていなければ単純な性能差で押し切られるさ。 多少の小細工など圧倒的なステータスの前には無力なものだから。 そこは君、様々な思惑を含んだ値札を付けられ、人に買われる身である神姫に生まれた以上、割り切るしかない。 ところが、だ。 僕がこれから提示する七人の神姫は、そんな万能と呼べる神姫から遠くかけ離れている。 一点特化、というやつだ。 ある方向に圧倒的な伸びを見せ、逆にその他はまるでからっきしというわけさ。 どうだい、僕の慈愛に溢れた優しさが分かっただろう、君は実に運がいいな。 ……分からない? まったく、神というものは理解されないのが常だが、優しく差し伸べた手すら気付いてもらえないとなると考えを改める必要があるな。 もし僕がアラストール型を七人倒せと言ったら君、いったいどうするつもりだ。 深く考えなくてもいい、どうすることもできないのだから。 装備を揃えたり経験を積むことくらいはできるかもしれないが、相手だって君と同じように時間を過ごすだろうし、君のマスターは貧乏だし、それに愛しの彼は君が強くなるのを待ってはくれない。 だからそう睨むなって。 もう一度言うが君は幸運なんだ、ラッキーだ。 なにせ相手は特化型だ、然るべき対策を打てば凡百である君にも勝利の可能性が見えてくる。 勿論、特化型の強さは並大抵のものじゃない。 ぶっちゃけノーマルのアラストールやキュクノス、ジャスティスなんて相手にならないだろう。 しかし付け入る隙がおおよそ見当たらない万能型より、隙だらけの特化型のほうが倒し易さという意味でなら、楽な相手だと思わないかい。 まあそれに、普通のバトルならその辺の神姫センターに行けば飽きるほど見られるのだから、僕を楽しませる意味でも君には特化型を相手して欲しいんだよ。 それもまた、願い事を叶えてくれる神様への供物、ってところさ。 さて、前置きはこれくらいにして。 記念すべき駈け出しの相手は、これもまた僕からのサービスなのだが、特化している部分が非常に分かりやすい。 呼び名が『13km』と言えば、どんな神姫か想像がつくだろう。 つかない? なに、あんなに有名な刀を君は知ら……ああそうか、あの漫画は三十年以上前のものだったか。 これはいきなり人選を誤ったか……。 いや、君は気にしなくていい、説明してやろう。 簡単に言うと、彼女はとてつもなく長いビームソードを持っている。 13kmというのはあくまで人間の大きさに換算したものだから、実際にはその1/12しか伸びないということになるが、それでもステージの端から端まで届いてなおかなりの余裕がある。 無駄? そんなわけがないだろう、13キロという数字にこそ意味があるんだ。 フン、元ネタを知らない君からすれば0.00005キロで十分とでも言うんだろうけどな。 まあいいさ。 あるマイナーな神姫チームの中で『第三デスク長』とも呼ばれている彼女と一度でも戦ってみれば、そのビームソードがどれだけ恐ろしいものか理解できるだろうさ。 いや、理解する時間すら与えてもらえないか。 せいぜい開幕と同時に胴体を真っ二つにされないよう気をつけることだね。 ◆―◇―◆―◇―◆―◇―◆―◇―◆ 神姫にだってヒトのような心があるんだから、ヒトにヒトメボレしたって何もおかしいことはない。 何もおかしなところのない夢見る乙女だ、恋の一つや二つくらい許されて当然だと思う。 私の取扱説明書に「神姫が他の男性に一目惚れしないようご注意下さい」とは書いてないんだし、ルール違反でもない。 などなど……などなどなど。 他にもいろいろと言い訳を考えてはみたものの、やっぱり言い訳は言い訳でしかなくて、クレイドルの上で夢の世界に旅立つこともできず、枕を抱きしめて悶々とするばかりだった。 6日前のこと。 私――飛鳥型ストライクウィッチカスタムのホノカさんは、不覚にもとある男性に一目惚れしてしまった。 不覚も不覚、まったくの不覚。 それは本当に一瞬のことだった。 ◆――――◆ その日は神姫センターのエアコンから良い風でも吹いていたのか、妙に調子が良くて、見事三戦快勝、私の愛機セイブドマイスターは面白いように相手を撃墜していった。 いつもは勝っても負けても三戦したら必ず帰るのに、自分が戦ってるわけでもないのに調子に乗ったマスターは、もう一戦やる、とか言い出した。 まあ、私だって少しばかり気が大きくなっていた。 勝つ時は大勝ちして負ける時は大負けしてしまう私の性質上、できる時に勝利の美酒を貯めこんでおきたい気持ちもないでもなかった。 ちょっと強そうな相手を物色しつつ、ひとつの筐体の中をそれとなく覗いた時だった。 そのアルトレーネは私の目をきつく縫いつけた。 長い髪をポニーにした以外、装備も装飾もありきたりな戦乙女。 なのに、その戦騎は一際強く光り輝いていた。 「ぜやあああああああああっ!」 槍を構え、銃弾の嵐の中を怯まず押し通るその戦い方は、私とは真逆に位置する――そのはずなのに、気がつけば、彼女の動作を一つでも多く目に焼き付けようと、目を見開いていた。 白い頬を銃弾が掠め、ポリゴンとなって分解されていく。 それでも彼女は止まらなかった。 運悪く副腕の最も脆い可動部に銃弾が当たり破損し、片方が千切れ飛んだ。 それでも彼女は止まらなかった。 彼女のことだけを見ていたのに、対戦相手の表情が手に取るように分かった。 あるいはその表情は、彼女と相対した私を想像したものかもしれなかった。 自身が持つ火力では彼女の道を遮ることはできない――どうしようもない恐怖に表情を引きつらせたまま、彼女の槍に胸を貫かれた。 試合が終わって、彼女達を模していたモデルが消え去っても、まるで真夏の太陽を凝視してしまった時のように、視界に焼き付いた戦乙女の姿は消えなかった。 あの時の感覚は今でもハッキリと胸に残っている。 強いて言葉で言い表すとすれば、【心が燃えた】。 彼女と戦うことがバトルの全てのように思えた。 彼女を倒すことがバトルの全てのように思えた。 筐体から出てきた彼女に気づいて、実力差や勝算のことなんてまったく考えず、ただ本能に従って彼女に勝負を挑みに行った。 そして彼女のマスターに話をつけようとした時――CSCをズッキューン! と撃ち抜かれた。 一目惚れ、というより一撃必殺だった。 髪は短く、理知的な顔立ちに細長のメガネがよく似合っていた。 全体的に線は細めで、服装には清潔感があってとても好印象だった。 や、好印象という言葉はなんだかわざとらしいか。 一目惚れしたんだし。 むしろ超印象だ(?)。 その姿が私のマスター……若くしてハゲ散らかした豚の真逆だからかもしれないけど、まさか神姫に自分のオーナー以外に惚れてしまう機能があったとは、この時まで考えもしなかった。 (念のため言うけど、私はマスターに惚れてない。神に誓って言う) 燃えていた心がトクンと高鳴った。 真っ赤に染まっていた心がピンク色に塗りつぶされた。 そして気がつけば、胸にあの槍が突き刺さっていた。 今度は幻覚などではなく、実物が、ザックリと。 挑んだバトルはとっくの昔に始まっていて、ハッと目を覚ますと同時に終わっていた。 「あれほど無抵抗に私の槍を受けたのは、あなたが初めてだ」と後でハルヴァヤに呆れ顔で指摘された時は、恥ずかしくて死んでしまいたくなった。 帰り際、醜い豚もといマスターにせがんで、髪を長くしてもらった。 勿論ハルヴァヤと同じポニーテールにするためだけど、不本意ながらマスターに妙にウケた。 なにが「飛鳥に黒髪ロング……ゴクリ」だ。 ◆――――◆ 明日、日曜日。 ハルヴァヤにリベンジする約束をしているのだけど、それすらあの人に会うための口実になってしまうことが恐ろしかった。 恋に落ちたあの日以来、寝ても覚めてもあの人のことしか考えられなかった。 あと一度の夜を超えたら、あの人の前で戦わなきゃいけない……だというのに、まだセイブドマイスターのメンテにすら手がつけられないでいる。 いやいや今から整備しろよと自分にツッコミを入れたくなるけど、ここ最近の寝不足がたたって瞼は銀行のシャッターのように無情にも落ちていく。 そして目を閉じてしまうと、暗闇にあの人の姿が浮かび上がってきて、再び目を覚ましてしまう。 その繰り返しだった。 「ふう……」 ダメだ、何もできない。 こんなことじゃあの人だけでなくハルヴァヤにも愛想を尽かされてしまう。 あの二人に『戦う価値なしの雑魚』だなんて思われたら私は、もう生きていけない。 再び瞼の裏に現れたあの人が、私に背を向けて遠ざかっていく。 肩に腰掛けたハルヴァヤは私に冷たい一瞥をくれたまま、あの人の耳元に何かをささやいた。 時 間 の 無 駄 だ っ た な いやだ、行かないで。 強くなるから、なんでも差し出すから。 なんでもするから、私のことを見捨てないで。 お願い神様、あの二人を遠ざけないで――! 「呼んだかね」 「ひぎゃあ!?」 いきなり耳元で声を出されて、驚いた拍子に尻がすべり、クレイドルの手すりに側頭部をゴツンと強かにぶつけた。 できるはずもないタンコブを手で探しながら顔を上げると、隣にいつの間にか、白い体に私と同じくらい長い金髪の神姫が立っていた。 パッと見だと、その神姫がオールベルンだとは分からなかった。 フロントラインのホームページに掲載されている姿形そのままなのに、人をおちょくったような雰囲気は私が知る剣士型とはかけ離れていた。 くりっとした丸い目は整っているはずの顔のバランスを大きく損ない、薄気味悪く笑みを浮かべた口元からは八重歯なんてのぞいちゃっている。 「ハハッ! うん、いいねいいねその反応。近頃は誰も彼もが神を見ても驚かないから、いよいよ世間の凡俗が超常にまで侵略しつつあると危惧していたんだ。しかし君のその豆鉄砲をくった鳩のような顔――うん、気に入った。次は君の願い事を叶えてやるとしよう」 これが、神様を自称するオールベルンとの出会いだった。 「おいおい、ガッカリさせないでくれよ。神を信じたんじゃなかったのか」 大袈裟に額に手を当てたオールベルンは「オゥマイガッ」と仰け反った。 神様を自称する奴が OhMyGod なんて言うもんだろうか、いや言わない、絶対言わない。 「さっきはあんなに驚いてくれただろう」 「そりゃ、真夜中にいきなり側に誰か立ってたら驚くでしょ、普通は」 私も自称神様も声を落とす気遣いはしなかった。 ゴーゴー寝てる豚マスターはちょっとやそっとじゃ起きやしないから。 「じゃあアレか、君は特別叶えたい願い事がない、どころか神の存在を信じもしないで僕のことを呼んだって言うのかい」 「私が呼んだ? あんたを? いつよ」 「さっき『お願い神様』って言っただろう」 「言ってない。心の中で思ったけど、口には出してない」 「やれやれ、分かってないなぁ」と手を広げて首を振るコイツは多分、日本一ムカつくオールベルンだと思う。 眉を八の字にして小馬鹿にしたように溜息をつく姿は、電気が消えて薄暗い部屋の中でも無駄に強く自己主人張してくる。 「神っていう存在は、下々の心の奥底の願いを聞き届けてやるものなんだぜ。暇つぶしに」 「誰が下々よ。あんただって普通の神姫じゃない。鏡見たことないの? どこからどう見ても店の棚に陳列されたオールベルンと変わりないじゃない」 「この姿もわざわざ君に合わせてあげたのに。いや、武装神姫なら何でもよかったんだけど、このオールベルンは実に素晴らしい造形をしているじゃないか。まさにスワン・レイク! ワルツ・ワーズ・ワイト! って感じだと思わないかい。できれば赤い個体のほうが良かったんだけど、聞けばアレは限定品らしい。君の飛鳥型も品薄商法の煽りを受けて同型の仲間が増えないんだろう。自他共に認めるトップランナーであるフロントラインがこの体たらくじゃあ、武装神姫の将来は明るくないな」 「わざわざ真夜中に不法侵入しといて何? ネガキャン? もう帰ってよ、明日は忙し……ふぁ~あ」 ひとつ大きな欠伸が出た。 明日は絶対に、こんなはしたない真似をするわけにはいかない。 ましてや「全神姫の中で最もお人形さんのようだ」と言われる飛鳥型なんだから、そのイメージをよりにもよってあの人の前で崩していいわけがない。 「ほうほう、忙しいと。それはもしや、この僕を呼んだことと関係が?」 「だから呼んでなんて……そうよ、その通りよ、誰でもいいから何とかしてほしいわよ。明日はどうしてもちゃんと戦わないといけないの。早く寝ないといけないの。分かる?」 「その割にはこんな時間まで起きてたじゃないか」 「だから眠れないって言ってんでしょ!」 募ったイライラが、ついに爆発した。 枕を掴んで、オールベルンに投げつけた。 部屋の外に響くくらい叫んでしまったけど、マスターは寝返りをうっただけで起きる気配はない。 喉から溢れるように出てくる不安は止められなかった。 「明日のバトルは何よりも大切なの! 勝てなくても絶対ちゃんと戦わないといけないのに、あの人のことばっかり考えてたせいで眠れなくて、ハルヴァヤの期待にだって答えなくちゃいけないし、なのに銃の整備もストライカーの調整もやってない!」 「――ふむ」 「リベンジ申し込んどいて最悪のコンディションで挑むなんて、嫌ってくださいって言ってるようなもんじゃない! バカじゃないの!? 何やってるのよ私、こんな……こんなことならバトルの前に自動車に踏み潰されたほうがマシよ!」 「つまり、君は明日のバトルまでにコンディションをベストの状態にしたいんだな」 「だったら何よ! あんたがなんとかしてくれるっての!?」 「その通り!」 パン! と目の前で空気が弾けた。 自称神様が前髪に掠るような距離で手を叩いた――つまり猫騙しをしたんだけど、その音に対して驚いた直後、唐突に強烈な睡魔に襲われた。 魂を抜かれたように力が抜けて、カクンと膝が折れて身体が真っ直ぐ崩れ落ちた。 「僕は神の中でもサービス精神に溢れた性質でね。初回限定サービスだ、君の願いを無条件で叶えてやろう。いやはや君は実に運がいい」 自称神様が何か言ってるけど、最後のほうはほとんど聞こえていなかった。 文字通り電源を切られるようにプッツリと、私の意識は途切れた。 ◆――――◆ 仮想とはいえ確かな実感を持った身体に生まれ変わる瞬間の不思議な感覚は、もうマスターに起動されて随分時間が経つけれど、未だ慣れる様子がない。 ストライカーユニットの先端まで実体化されると同時にエンジンを起動させた。 プロペラが滑らかに滑り出し、着地寸前だった砂を巻き上げる。 ストライカーが地に降りる前にホバリングできたのは生まれて初めてだった。 それも不安定に空中でふらつくのではなく、ほとんど立っている時と同じように安定している。 脚に伝わる振動はいつもの半分もなくて、代わりにまるで翼を得たような高揚感を伝えてくれる。 空戦型が持つには二回りほど大きく長いライフル、セイブドマイスターのセイフティを解除してハンドルに手をかけると、驚くほどスムーズに引くことができた。 ガシャコッ、と初弾が装填される音もいつもより小気味良い。 おまけに体は睡眠不足による気だるさどころか、活力に満ち溢れていた。 指の一本一本から頭のピンと尖った耳の先、尻尾のフサフサの毛に至るまで回路が通っている感覚を明確に掴める。 自分が持つ本来の性能を、これほど明確に把握できたことはなかった。 「これが……私、なの?」 続々と新型の高性能な神姫が出てくる度に嫉妬していた自分が馬鹿馬鹿しく思えてきた。 ちゃんとコンディションを整えれば、私だって、これほどまで素晴らしい性能を発揮できる。 昨日眠っていた間に、あのオールベルンはいったい何を――。 「神姫三日会わざれば刮目して見よ、とはよく言ったものだ。先週とはまるで別人だ、一目見ただけで分かる」 砂嵐の向こう、ハルヴァヤの声は熱砂に焼かれてなお涼し気だった。 「いや失礼、その前に言及すべきかな――髪型、変えたのか。ええと……」 「私はホノカ。髪はあなたを真似したんだけど、気づいてもらえてよかった」 「真似を? どうして私なんか、これは邪魔にならないよう縛ってるだけだし、他にもっと洒落た神姫は沢山いるだろう」 「もしかしてハルヴァヤ、あなた野暮天?」 「……ははっ、昨日同じことを言われた。そんなつもりはないが、でも勘違いはされやすいな。私はあなたが想像するほど規則正しい性格をしていないんだ」 照れ隠しに笑うハルヴァヤはすごく可愛かった。 こうして対等に喋っていることが信じられなくて、自分が自分ではない別人のように思えてくる。 こんなにも気軽に言葉が出てくるのなら、自分の知らない自分になることも面白い。 ハルヴァヤも、私が勝手に持っていた堅物の印象より随分と気さくだ。 遠くから見ていた時は、刃のような鋭い眼差しと不屈の闘争心に見惚れるだけだった。 でも、こうして歩み寄ることで見えてくるものがある。 私の髪の変化に気づいてくれるハルヴァヤ。 照れ笑いをするハルヴァヤ。 もっと、引き出したい。 この神姫のありとあらゆる表情を引き出したい。 差し当たっては――。 「さあ、そろそろおしゃべりの時間は終わりだ。ホノカ、君はリベンジだと言ったな。悔いのない勝負にしよう」 敗北して悔しがるハルヴァヤはどんな表情を見せてくれるんだろう。 ゴーグルをかけ、私に向かって一直線に構えられた槍と揃えるように、スターのバレルを構えた。 距離は十分離れているはずなのに、ナイフを互いの喉元に突きつけ合っているような緊張感。 「隙あらば伐つ」と彼女の目はハッキリとそう言っている。 きっとこれが、私の遥か先にいる彼女のステージなんだ。 流行る気持ちがトリガーにかけた指を勝手に動かしそうになる。 アルトレーネの分厚い装甲でも、この弾丸は防ぎきれない。 でもそれだけじゃハルヴァヤには届かない。 だからセレクターレバーを切り替えた。 力がみなぎってくる今のコンディションなら、マスターがロマンが云々言いながら付属した、余計極まりなかったフルオートも活かせる。 スタートの合図が耳に届いた。 「「 いくぞ! 」」 重なった声を皮切りに、砂嵐はいっそう強くなった。 『13km』-2/3 トップへ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1795.html
…… この世に生を受けた「自分」の前に佇む人物。 「彼」は「自分」のオーナーなのだろうか。 「彼」はこちらを見据え、諭すような言い方でこう告げた。 「自分の持つ"可能性"を限界まで追及してくれ。…それだけだ」 「彼」はそれだけを告げると、静かに去って行った。 …薄暗い廃墟の中。 天井の裂け目から漏れ出る光を反射し輝く鏡の破片。 破片をのぞき込み、映し出された姿を見てすべてを理解した。 「可能性…か」 「自分」は、自らを映す破片を粉々に踏み砕いた。 ……… …… … 無頼19「ヒカルの夢」 途中経過は省略して、僕はメンテナンスショップに居る。 ヒカルの定期メンテの為だ。 「なんかいやだなぁ…、バラバラにされるんでしょ?」 「安心しろよ、そのままお陀仏なんて事はない筈だから」 「ハズは余計でしょ!?」 そんなカンジでいつも通りの会話が進む。 おっと、ようやく順番が回ってきたか。 「次はヒカルか…、どことなく簡単そうだ」 「長瀬さん…、なんか疲れ気味みたいですけどどうしたんですか?」 「どうしたもこうしたもないよ…、…アレのせい」 そういって指差したのは一枚のポスター。 『アオゾラ町神姫センター主催 武装神姫バトルロンド大会ウォードック杯、11/30開催』 …ああ、なるほど。 「大会に向けて定期メンテナンスを繰り上げて受ける人が多い、と言いたいんですね?」 「その通りだ。おかげで常時フル回転、久しぶりの休みもつぶれてしまったよ…」 そう言いうなだれる長瀬さん、他にいろいろあったのだろうか? 「まあ、色々あるのさ…。…一番終わるのが早いのは…ちょうどいい、メィーカーだ」 ……… 「ふぎゅう…」 フラフラになって出てきたメィーカー、任せて大丈夫かな? 「メィーカー、終わったばかりだが次のメンテだ」 「ご…5分だけ休ませて下さいぃ…」 そう言いバタッと倒れるメィーカー、人間だと過重労働で訴えられそうだ。 「あら、彩聞君も来ていたのですか?」 後ろから声、振り向けばそこに居たのは先輩。 「先輩もですか? メンテ」 「零牙のメンテが終わったので、引き取りに来たんです」 先輩の表情はどこか嬉しそうであった。もしかして何か企んでる? 「メィーカー、これ以上客を待たせるな」 「うう…わかりましたぁ…」 メィーカーが復活したので後は任せるとするか。 「ほらヒカル」 「んー…、そのまま帰らないでよ」 誰が帰るか。 手続きを終わらせ、そそくさとその場を離れる。 呼ばれるのは最低でも1時間後、それまで神姫ショップで買い物でもしてるか…。 ~・~・~・~・~・~・~~・~・~・~・~・~・~ 「はい、ではスリープモードに入って下さい」 MMSサイズに仕切られた術式室、その中の一つがメィーカーの受け持ち区域である。 工具はすべてMMSと同規格のサイズであり、人間の職員が介入する場合は別の術式室が用意されている。 「顔見知りといっても、体をいじられるのはちょっとなぁ…」 「あら、彩聞さんと深い関係になってないんですか?」 「な…なにいってるですか!?」 顔を真っ赤にして目をむくヒカル。 「冗談ですよ」 クスリと笑いながら使用機器の最終チェックを終了させるメィーカー、いつでも開始可能である。 「ささっ、さっさと眠らないと強制的に落としますよ?」 「それは勘弁、………」 小さな電子音と共に、ヒカルはスリープモードに入った。 「ゆっくりしていってね!…じゃなくて、ゆっくりお休みなさい…」 そう言いつつ、早速分解を始めるメィーカーであった。鬼だ(爆) さて、ここからはヒカルの夢を覗く事にする。 何?犯罪だって?、ナレーションだから別にいいのだ。 ~・~・~・~・~・~・~~・~・~・~・~・~・~ 「おっす形人」 「一深、何でここに居るのが判ったんだ?」 舞台は真昼間の公園、中央図書館のとなりにある大きな公園である。 「私がお姉さまの匂いを辿って来たのです!」 犬か、お前は。 「リック、女の子は…えっと…なんだっけ?」 「"エレガントに"だ」 しかしヒカルの中の人はリュミエールと同じではないのだった。 その時! 白い影が目の前を通り過ぎ、形人がいなくなっていた! そしてその影は一深たちの目の前に着地し、白いマントとフードを羽織った女性の姿をとった。 「な…誰だお前は!?」 目の前に佇む白いマント女を指さし一深が吠える。 「教えませんよ」 更に飛び上り、ついでに一深とリックを踏んづけて飛び去って行った。 「な、何なの一体…!?」 その場に残されたヒカルは憤慨するだけであった。…しかし! 「それどころじゃないや、早く追わないと…!」 ヒカルはそう言い、目の前の草むらに飛び込んだ。 …… 「…風よ!我の姿を覆い隠せ!」 一声と共に風が吹き荒れ、それは竜巻となってヒカルを覆い隠す。 異常気象甚だしいが、夢だから省略する。 スタッフ(杖)と小銃が合わさったようなものを掲げ、ヒカルは紡ぎだした。…呪文を。 「我が名と技を背に我は実行す。我はヒカル、超常なりし法と理の使いなり」 ちょっと待て、それはまかでみではないか。専用のものが浮かばなかったのか!? 「光よ、風よ。我を戦乙女へと変えよ!」 …もうちょっと捻れなかったのか…? 閃光と共に姿が一瞬で変わり、サイズが12/1…つまり人間大へと変わっていた。 その装束は"管理局の白い悪魔"を連想させる…というか、似過ぎである。 では、変身プロセスをもう一度見てみよう。 ~・~・~・~・~・~・~~・~・~・~・~・~・~ 「風よ、光よ。我を戦乙女へと変えよ!」 彼女が秘める魔力は人間の1/12しかない。そのため魔力を装填した10mmカートを多数内蔵したスタッフ"フィリア・リスティック"を変身補助に使用する。 所定のワード(呪文)を唱える事によりカートが一つ消費され、その身体を一度分子分解し光と風を魔力で物質化したものを使い人間大に再構成する。 次に自らの魔力を使用し一糸纏わぬその姿を風の繊維に包みこむ。繊維は絡み合い、さらに防御魔法を織り込むことによって通常兵器はものともしない無敵の服と化す。 最後に光の分子が障壁魔法として服に模様をつける事によって、彼女の変身は完了する。 ちなみに補助が必要ゆえ、変身には約1秒掛かるのが難点である。 「待ってて!今助けるから!!」 スタッフを掲げ、颯爽と飛び立つヒカル。 …一深とリックは無視ですかそうですか。 …… 都市上空を音速の3倍もの速度で飛行するヒカル。 当然下の町は衝撃波で大惨事となっているが…夢なので割合する。 そんな彼女の視野に霧のようなものが入った。 それを拡大して見てみれば、はるか彼方に武装したNAKEDの大群が見えることであろう。 だが ずどぉぉん! 音速の3倍で飛んでいる以上、視界に入った時点で直に通り過ぎる。 あっさり突破された包囲網は、遅れて通過する衝撃波になぎ倒された。 …まあ、ご愁傷様ということで。 「見つけた!」 もはや追いついてしまうのはご都合主義だが、そこは夢。あきらめてもらいたい。 「君は何者なの!? なぜ形人を連れ去ったの?」 口調が変わっているが、コスチュームを替えることによる気分転換なのだろう。たぶん。 「もう追いついたのですか?ちょっとは苦戦してくれればいいのに…」 「その声はもしかして!?」 声に聞き覚えがあるのか、驚きを隠さないヒカル…いや。魔砲少女(キャノン・ガール)ヒカル。 「そう…双葉では在庫と罵られネタにされ、育児放棄の飲んだくれと言われ続ける屈辱…」 自虐か?それは自虐なのか? 「…じゃなくて!この作品の主人公の座をいただくためにさらったのですよ!」 そう言ってマントを脱ぎ捨てる女。 「やはり…アーンヴァル! …ていうかラスターだけじゃ不満!? 大体「アールとエルと」とか「双子神姫」とかその他もろもろで主役張りまくってるじゃないのアンタ! 私たち第五弾組以降は主役を張ってるSSなんてほとんどないのよ! ま・し・て・やエウクランテなんてこの神姫無頼と「スロウ・ライフ」の「武装神姫飛鳥ちゃんエウクランて」しかないのよ! 他はやられ役だったりその他大勢だったり脇役だったり…そもそも何で第二弾までが主役の大半をしめてるの!?もっと五弾以降の主役が増えてもいいと思うのよ私は!? それどころか私だって最近は零牙とジーナスたちに立場を盗られてるし…だぁーっもう!!ハラたつ!! ただでさえ影の薄い私から主人公の座を奪ったら何が残る!?、ただのへっぽこネボスケ鳥子にしかならないじゃないの!ていうか…」 「わかりました!形人さんを返しますからもう止めてください愚痴は!!」 ヒカルの"航空機関砲M61バルカン"な愚痴トークに完敗した白子、毎分4000発は伊達じゃない(違う) 白子が投げた赤い玉をキャッチするヒカル、中にはフィギュアサイズの形人。 「…ふぃぎゅ@メイト? まあいいや、これで心配する必要はなくなったし…悪は成敗しましょうか」 「か、返したのに許してくれないんですか!?」 ヒカルは白子をビシッと指さし 「かの偉人は言った!「悪人に人権はない!」ましては神姫には元から人権が無い! 覚悟しなさい…。」 ビビリがはいる白子の目には、しっかりと魔王モードになったヒカルの濁った目が映っていた。 「…頭、冷やしてあげるから」 「き、きぃゃあぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」 「これが私の究極全壊ッ! ジェノサイド・ブラスター!!」 「虐殺」と名に入っちゃってる魔法(魔砲)を容赦なく白子にぶっぱなすヒカル。 まわれ右して逃げ出した白子は、跡形もなく消え去ったのだった。ムゴい…。 「………(汗)」 ログ整理を並行して行っていた長瀬は、この映像を見て唖然とした。 日頃の鬱憤を夢で発散していたのか…。 「…ふぅーむ、こりゃあ形人君に言っとくべきかな?」 ~・~・~・~・~・~・~~・~・~・~・~・~・~ 「ヒカルの不満?」 形人は呼ばれた早々、長瀬にこう言う話を聞かされた。 「うん、どうやらかなり"溜まっている"な。メタフィクションになってしまうが、ヒカルは零牙やジーナスに主人公としての株を奪われている事を気にしているのがひとつ。次は主人公なのに成績が酷い事、最後は個性やインパクトが弱すぎる事。といったところかな」 噛み砕くように聞かせる長瀬。まあメタフィクションな内容だからだが。 「そんな事言われても、今更変えられませんよ。最終回だって近いのに…」 メタフィクションにはメタフィクションで返せと言わんばかりにのセリフを言う形人。もう本話はグダグダである。 「ならば今現状を納得させるのが一番だと思う、俺から言えるのはそれだけさ」 どうしようもない、企画段階からの設定に頭を抱える事になるとは…。 自分…第七スレの6は次回作に不安に感じつつ、本話を終わらせる事にする。 [強制終了] 流れ流れて神姫無頼に戻る トップページ
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1692.html
「・・・・ねぇ、彩女」 「なんですかアメティスタ・・・よいしょっと」 「・・・・二人っきりだね」 「そうですね・・・・っと」 「バトルなんかやめてさ、二人でどっかいこうよ。ほらあそこ、ホテルあるよ」 「そうですか・・・・・・・よっと」 「・・・・・・・・おっぱい揉んでいい?」 「駄目です」 * ホワイトファング・ハウリングソウル * 第十三話 * 『黒衣の死神』 『都市ステージ』を、彩女とアメティスタは歩いていた。 ・・・いや、正確には歩いているのは彩女だけである。アメティスタは歩いていない。 ならば彼女はどうしているのか。 彩女におぶさっているのである。 「・・・いくらなんでもですね。・・・・よっと、こういう時くらい二本足にしたらどうですか・・・・っと」 「ヤだ。だってこのヒレはボクのトレードマークだよ? アイデンティティなんだよ? それに二本足にするには声を魔女にあげないといけないし」 そういうアメティスタの足は今もイーアネイラの装備であるティティスだった。これでは陸上で歩けないため彩女が背負って水場まで運んでいる。 「そもそも水中戦でもないのにイーアネイラ装備なのがおかしいんです。・・・っと。エウクランテだって水中専用じゃないんですよ。・・・よいしょ」 「知ってるけどさ。でもこれは外せないね。ある意味ボクの決意の証みたいなもんだし」 「だからって・・・っと。今襲われたらどうするつもりですか・・・っしょっと」 「大丈夫だよ。ボクらが敵に遭遇するのはピッタリ五分後、彩女がボクを公園の池に運び終わるのが今から二分後。三分の余裕があるよ」 「・・・便利ですね予知能力・・・・っと」 そう、今彩女とアメティスタは公園を目指している。 アメティスタが入れて戦えるような場所がそこしかなかったからだ。 ・・・余談だが戦闘用に武装をしたアメティスタは結構重い。今こうしている間にも、彩女の体力は削られ続けているのだ。 「便利とはいっても、このバトルの結果は見ないようにしてるよ。だってつまらないじゃん」 「それもそうですね・・・・よいしょっと」 彩女は掛け声と共にアメティスタを背負いなおす。 公園はもう少しだった。 「・・・・うん。ヴァーチャルとは言えやっぱり水に浸からないとね」 無事公園に着き池に入ったアメティスタはそういいながら水をすくった。 彩女はとっくの昔に公園を出て、敵を探している。 あと一分もすれば天使型の一撃を食らうだろう・・・・どうなるかはあえて予知しなかった。その方が面白いからだ。 「~♪」 彼女は鼻歌を歌いながらプチマシィーンズに指示を出す。その数凡そ十三。 公園中に散ったプチたちはそれぞれのポジションにつき、情報を送ってきた。 「・・・・ふぅん。西から来たか。とりあえず公園に入ったから・・・結界をはるか。あとはボクの闘いだね」 アメティスタがそういうと同時に、公園内に霧が立ち込める。 なんてことはないただの霧だ。 「・・・煙幕のつもりかしら?」 と、その霧の中、アメティスタのものではない声が響く。 声のしたほうへとアメティスタは顔を向け・・・一瞬その顔が強張る。 「煙幕じゃないんだけどね。・・・まぁ、似たようなもんかな? 始めまして、ボクはアメティスタ。キミは?」 「わたしの名前はルシフェル。悪魔型のルシフェルよ」 軽く霧が晴れ・・・ルシフェルの異形が姿を現す。 足はザバーカが装備され、素体の両腕はチーグルを装備している。その両手には巨大なリボルバーキャノンを持ち、腰にはデスサイズがマウントされていた。しかしなんといっても目を引くのは背中に取り付けられた巨大な羽であろう。 蝙蝠を思わせるそれは、正しく悪魔型たる彼女のために作られたかのように存在していた。その漆黒の羽は夜の闇を思わせる妖しげな色だった。 「・・・・いい趣味してんじゃん」 「それはどうも。それよりもそろそろ始めない? わたし達今日中にあと三回も戦わなくちゃいけないの」 ルシフェルはそういって、リボルバーキャノンの撃鉄を上げる。 「・・・いいよ。それじゃぁ・・・始めようかっ!!」 武装神姫・イレギュラーキャンペーンバトル アメティスタ対ルシフェル・・・開戦 前・・・次
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1255.html
「相手を寄り付かせないで倒すパルカで」 「…お兄ちゃん。ありがとう、嬉しいです!」 左肩で、頬を桃色に染めながら喜ぶパルカ。 まぁ喜んでくれるのは嬉しい。 だけど他の三人は少し残念そうな感じだ。 『後で他の奴等と戦うから、その時にな』と言うとパア~と明る表情になる神姫達。 さて、そろそろ対戦するか。 装備…よし! 指示…よし! ステータス…よし! パルカを筐体の中に入れ、残りの神姫達は俺の両肩で座ってパルカの観戦をする。 「パルカ、頑張れよ!」 「うん!お兄ちゃん、私頑張るから!」 「相手を接近させないように弾幕を張るのよ!」 「一番最初のバトルであたしの妹なんだから!姉のボクを恥じかかせるなよ!!」 「負けそうになったらパルカの巨乳で相手を翻弄させるのもアリよ~!」 「ルーナさん…さすがにそれはちょっと…」 パルカは少し心配そうにしていたが、頑張なりな笑顔を俺に見せ筐体の中へと入って行く。 気がつくと俺は両手で握り拳をつくっていた。 いつになく俺の心は興奮していたのだ。 何故だろう? 多分、誰かを応援している事によって熱くなっているのかもしれない。 それとパルカに勝ってほしい、という気持ちがある…かもなぁ。 俺は筐体の方に目を移すと中には空中を飛んでいる二人の武装神姫達が居た。 READY? 女性の電気信号がの声が鳴り響き、一気に筐体内の中が緊張が走る。 勿論、外に居る俺達もだ。 FIGHT! 闘いの幕があがった。 お互いの距離150メートルからスタートして、敵のストラーフが接近しパルカは後方に後退する。 敵のストラーフが総重量的に重いせいか、二人に間の差がひらく。 距離250メートルぐらいの間合いかな。 「お願い!当たって!!」 パルカは“ヘルゲート”アサルトブラスターを取り出しババババ、と連射する…が。 「へっへ~んだ。そんなじゃ当たらないよ~だ」 余裕綽々で避ける敵のストラーフ。 回避した後はすぐさま間合いを詰めパルカに近づく。 「ッ!?これなら!」 すぐさま“ヘルゲート”アサルトブラスターをしまうと“ピースビルダー”リボルバーを二丁取り出した。 二丁拳銃か!? パンパン! 「ヒョイ、ヒョイ、と。楽勝ー」 慌てて撃ったためかパルカの攻撃はミスした。 クッ! このままではマズイ! そう思った瞬間。 間合いの距離は50メートルぐらいになっていた。 「クラエー!」 「!?」 敵のストラーフはDTリアユニットplusGA4アームのチーグルで攻撃しようとした。 「間に合って!」 “ヘルゲート”アサルトブラスターを再び取り出し自分に迫ってきてるチーグルに縦に向けた。 ガキャン! 筐体の街の中でとても鈍い音が響いた。 何故そんな音がしたのか。 それは“ヘルゲート”アサルトブラスターを盾にして、間一髪の所でチーグルの攻撃から逃れたのだ。 しかし、“ヘルゲート”アサルトブラスターを盾にしたおかげで、もう銃としての機能は失われていた。 あんなボロボロじゃあ撃てないだろう、DTリアユニットplusGA4アームのチーグルでの攻撃は破壊力抜群という訳か。 パルカは間合いを詰められてしまったので後方に下がる。 しかし、敵のストラーフはそれを許さない。 アングルブレードを取り出しパルカに再び攻撃しようとしたのだ。 「ッ!」 「避けるなよ~」 ギリギリの所でかわす事が出来たパルカは更に間合いを広くしビルの背後に隠れてしまった。 「…お兄ちゃん。助けて、お兄ちゃん…怖いよー…」 ビルの背後で声を殺しながら無くパルカ。 しかも俺に助けてを求めている。 畜生! 助けてヤりたい所だが俺にはどうする事も出来ない。 …いや、まだ助けてあげる事は出来る。 けどその方法は…負けを意味をする『降参』だ。 どうする、俺。 私的には勝ってほしい。 だが、これ以上パルカが傷つくのをただひたすら眺めるのは嫌だ。 「パルカ、聞こえるか?」 「お、お兄ちゃん!」 俺の声に気づくとパルカの目から更に涙が流れる。 可哀想に…よっぽど怖かったのだろう。 「今すぐ降参の意思を相手に示すから待ってろ」 「えっ!?なんで降参するの!」 「そうすればお前が怖がる必要は無くなるからだ。無理にバトッたってしょうがないだろうが」 「お兄ちゃん…」 「それにお前が泣いて苦しんでいる、姿なんか見たくないんだよ」 「………」 「ナッ。だからパルカはそこで待っ」 「お兄ちゃんは私に『頑張れよ』を言ってくれました」 俺の言葉を途中で遮ったパルカは俯きながら次々に口を開く。 「あの時、私は『あぁ、お兄ちゃんに期待されてる。頑張らなくっちゃ!』と思いました。…だから今が頑張る時です!」 バッ、と俯いた顔を俺に見せたパルカの顔は涙目でもキリッとした顔をしていた。 今までオドオドしていたパルカを見てきたが、ここまでシッカリとしたパルカは初めて見た。 フッ、パルカがそう言うなら俺は何も言うまい。 「なら、頑張って行ってこい!パルカ!!」 「はい!お兄ちゃん!!」 ビルの背後に隠れのをヤメて敵のストラーフに自分の姿を現す。 すると敵のストラーフがニヤついた顔で。 「アンタのオーナーも貧弱ね。さっきまで降参するかしないか悩んでいたよ。でもそう考えるのも無理もない話。貴女、弱いし」 「お兄ちゃんの悪口を言わないで!」 ブオン! 「ヘッ…ちょっとー!?!?」 パルカが敵のストラーフに投げつけたのはモアイ像だった。 モアイ像は固形燃料ロケットおよび整流装置およびアクティブセンサーが内蔵されておるので殆どミサイル状態。 つか、ミサイルと変わらない。 でも命中率が-125なので敵のストラーフに避けれてしまった。 「ちょっとアンタ!危ないじゃ、キャーーーー!?!?」 「えいえいえいえーーーーい!!!!」 次々と敵のストラーフにモアイ像を投げつけるパルカ。 実はパルカの頼みで出来るだけ武器のモアイ像を装備させていたが…これは中々シュールな光景だ。 だって沢山のモアイ像が敵のストラーフに向かって飛んで行くのだから。 ていうか、パルカが投げすぎて近辺はそこらじゅうモアイ像だらけだ。 外れたモアイ像はビルを破壊したり道路を破壊しながら落ちてぶつかっていく。 …ホント、シュールな光景だ。 あ、モアイ像で思いだしたんだけど。 このデザインのモアイ像。 コ○ミ株式会社のゲーム、『GRADIUS』に出てくるあれだろう。 特に指摘するのなら、PS2のGRADIUSⅢで出てきて、宇宙の中でクルクルと回転しながら口から子モアイ像を吐き出して攻撃するアレ。 因みにあのシューティングゲームは大好きだ。ファミリーコンピュータからPSPまで持ってるぞ。 ってそれは置いといて…しかし、モアイ像の何処を気にいったのだろうか、パルカの奴は。 後で聞いてみるか。 「これで、最後よーーーー!!!!」 「イヤーーーーこれ以上は止めてー!!!!」 ありゃりゃ。 敵のストラーフは戦意喪失してしまったようだ。 それもそうだ。 なんたってモアイ像が飛んでくるのだから。 ん? 筐体の俺の方についてるコンソールを見ると相手からの通信が出ていた。 ん、と何々…。 俺はコンソールを見るとそこには『降参』の文字が浮かび上がっていた。 それはこちらの『勝利』を宣言する言葉。 すぐさま俺はパルカにこの事を告げようとした。 「パルカ、戦闘中止だ!相手のオーナーが降参したんだ!!」 「…え?それは本当ですか??」 最後のモアイ像を投げつけようとしていた動作を途中で止め、俺見ながらキョトンするパルカ。 「ああぁ。本当だ、俺達の勝ちだ」 「や、やったー!勝ったんですね、私!!」 筐体の中で俺の事を見ながら喜ぶパルカ。 俺も自分の神姫が勝った事が嬉しくて微笑む。 両肩にいるアンジェラス達も喜びはしゃいでいる。 そうか…。 これが武装神姫の楽しみ方か。 確かにこれは楽しい。 おっと、パルカを筐体から出さないといけないなぁ。 筐体の出入り口に右手を近づけると勢いよくパルカが飛び出して来て俺の右手に抱きつく。 そのまま俺は右手を自分の目線と同じぐらい高さまで持っていきパルカを見る。 「よく頑張ったな、パルカ」 「はい!私、お兄ちゃんの言葉が励ましになって頑張る事が出来ました!!」 「そうか。そいつはよかったな。これはご褒美だ」 「あ、あうぅ~」 俺の右手の手の平に乗ってるパルカの頭を左手の人差し指の腹の部分で撫でる。 撫でているとパルカが俺の指を掴み自分の胸にそっと押さえるつける。 うわっ、パルカの巨乳が…物凄く柔らかい。 「あの、お兄ちゃん。頭を撫でるより、私の胸を触ってください」 「なんでまたどうして?」 「そっちのが気持ちいいからです。ご褒美なら…いいでしょ?お兄ちゃん」 「う~ん、まぁいいよ。お前がそれで良いと言うなら」 「お兄ちゃん、ありがとう」 プニプニとパルカの胸を触ると押した方向に乳房が歪みエロスをかもし出す。 ウハッ、気持ち良過ぎだぜ。 つーかぁ、まるで俺がご褒美をもらっているような感じなんだけど。 「いいなぁ…。ご主人様、ご主人様、次の試合は私を指名してください。絶対勝ちますから!」 「あー!いいなぁ~パルカの奴~。よし!!次のバトルはボクが出る!!!」 「ダーリンのご褒美を貰うために頑張らないといけませんわね」 両肩で何やらパルカに嫉妬しているように見える三人の神姫達。 そんなにご褒美が欲しいのか? まぁ今日はトーブン、ここにいるつもりだから一応全員バトルさせてやるか。 すぐさま指を胸から離すとパルカが少し不満そうな顔しながら。 「え、お兄ちゃん。もうご褒美お終いですか」 「まぁね。解ってくれや」 「む~、分かりました。でも次にご褒美くれる時はもっと触ってくださいね」 「…善処します」 ちょっと疲れた。 体力が、というよりも精神的に…。 まぁいいか…、パルカが気持ち良くなるのなら俺はなにも文句は言わん それに胸を触った時のパルカはエロかったし。 また胸を触りたくなるような表情だった。 ここでまた再びパルカの巨乳を触ったりすると乗っている三人に何されるか解らないのでお触りはお預け。 パルカを右手から左肩に移動させ、俺は次の筐体に向かった。 闘いはまだ始まったばかりだ。 「さぁ行くぞ!俺達のバトルロンドの幕開けだー!!」 こうして俺達のバトルロンドがスタートした。 そしてこの日からパルカの二つ名が出来た。 名は『銀を操る者』…。
https://w.atwiki.jp/battleconductor/pages/119.html
デザイナー 声優 神姫解説 性格セリフ一覧 親密度○時イベントのオーナーの呼び方 神姫ハウス内コミュニケーション ステータス情報 覚えるパッシブスキル一覧 神姫固有武器補正 神姫考察 総評・運用 神姫攻略法 お迎え方 アップデート履歴 コメント デザイナー BLADE(まじしゃんず・あかでみい、武装神姫2036、等) 声優 喜多村英梨(ガールズ&パンツァー:ダージリン、フレッシュプリキュア!:蒼乃美希、魔法少女まどか☆マギカ:美樹さやか、這いよれ!ニャル子さん:八坂真尋、他) 神姫解説 動物の特性を全面に取り入れた独特のアプローチでファンの多い、Kemotech社の開発した犬型神姫。胸部装甲と1セットになったナックルによる近距離打撃戦、専用大型キャノン・吠菜一式による遠距離砲撃、さらにそれぞれが個別にAIを備えた5体の中・遠距離専用オプション兵器・犬型プチマスィーンズによる追尾攻撃と、あらゆる距離に対応できる武装を備えた全距離対応強襲型神姫に仕上がっている。 名称:犬型ハウリン(いぬがたはうりん) メーカー 素体:Kemotech 武装:Kemotech 型番:KT36D1 フィギュア発売:2006年9月28日 主な武装:頭甲・咆皇 胸甲・心守(本作では下記の理由により、これひとつ装備するだけで「獣牙爆熱拳」を使用出来る) 手甲・拳狼(腕装甲と一体化したナックル。本作では胸甲・心守とワンセット) 脚甲・狗駆 KT36D1ドッグテイル 十手(片手斬撃武器) 棘輪(きょくりん/トゲ付きリング。投擲武器) 吠莱壱式(ほうらい・いちしき/下手持ちヘビーガン) (通称「骨っこバズーカ」。実は上下連装式で二門の砲口を持つ。フィギュアでは弾倉が外せたりと意外に芸が細かい) 犬型プチマスィーンズ(全5機。本作では未実装…?) 狗狼(クーロゥ)Type1(リペイント版武器。本作では未実装) 狗駆(クック)Type1(リペイント版レッグ防具。本作では未実装) 報賞認識票・ごほうびドッグタグ(リペイント版首輪。本作では未実装) 振尾(フーリオ)Type1(リペイント版リア防具。本作では未実装) しっぽアクセ:“つれてけご主人様” (リペイント版リア防具だが振尾Type1にのみ装着できる。本作では未実装) 武装神姫第2弾。愛称「犬子」。第1弾組のアーンヴァルやストラーフ、同期のマオチャオ(と、そしてEX枠だがヴァッフェバニー)と共に、シリーズ初期を代表する神姫のひとり。 それだけにフィギュアという面では、技術的に過渡期にあったため「決して元デザインに忠実とはいえない頭部パーツの造形」という面もさる事ながら、武装の可動範囲が特に上半身において狭いもの(素体腕を外し、まるまる武装と交換する方式。これにより肩関節の可動範囲が事実上失われてしまい、腕部もダブルボールジョイント接続になるため干渉が多く無改造だと吠莱壱式を正面に構えることが出来ない)となってしまったため、総合的な評価としては微妙なものとなってしまった。 しかしながら、先発の第1弾組とはうって変わったデザイナー独特のセンスによる方向性と、ボイスパーツのお方がパーソナリティの双璧(もう片方はこちらのお方)を務めたウェブラジオ「RADIO RONDO」の存在、そして何よりデザイナー自身が公式コミック版「武装神姫2036(以下「2036」。単行本全5巻)」を電撃ホビーマガジン(現在は電撃ホビーウェブへと移行)に連載していたという事もあって、相方共々今なお根強い人気を誇る。 武装神姫というシリーズが、かくも多種多様極まるデザイン的方向性を終始保ち続ける事が出来たのも、彼女達ケモテック神姫(と、続く第3弾組)がその先鞭をつけた功績あったればこそだろう。 現にその影響は、後年のガールズプラモ群においても明らかに偏ってはいるが見る事が出来る。 2007年度に開催されたホビーイベント『キャラホビ2007 C3×HOBBY』では、「2036」本編での水着姿を再現したリペイントバージョン(俗称:水犬子)が販売され、その後僅かに仕様変更された電撃15周年バージョンも販売された。こちらは装備が全体的に軽量化されている上頭部パーツの造形も改良されているため、従来品と組み替えるという楽しみ方も可能だ。 以上の3バージョンいずれも大量に販売されたため、現在の中古市場でも比較的簡単に見かける神姫となっている。 更に、デザイナー考案による強化型「ガルダハウリン」も存在していたが、バトロンのサービス終了に伴いお蔵入りとなった経緯がある(「2036」には登場)。 果たしてこれらの装備は実装されるのだろうか? それはバトコンスタッフのみぞ知る。 従来の公式媒体では、他でもない「2036」の主人公格たる凛をはじめ、ノベライズ版「神宮司シリーズ」の情報屋アイコ、そしてアニメ版のポッチィ等ほぼ一貫して常連メンバーを務めていた。 当然ながらバトロン・バトマス(およびMk.2)・バトコミと、ゲームにおいても皆勤賞である。 しかし、本作ではそんな状況が一変。何故かなかなか実装の気配が見えず、ハウリンオーナー達のみならずケモテックファン達をも長い間やきもきさせてきたが、この程シーズン2発足に伴い栄光ある最初の神姫として、漸くの実装とあいなった。 久々の登板は概ね歓迎された一方で、件の「チェイスチェイスジョーカーズ」絡みの減台騒ぎを経てからでは「遅過ぎた」との声も。 公式もこれを気にしてか、実装後2/6までと比較的長めのピックアップ期間をとっていた。 なお、2024年のパチスロ版にも登場を果たしている。 なお本作では、BLADE神姫独特のプロポーションを再現するためか、フィギュア版における1st素体(厳密には脚部を短く改設計されている)ではなく3rdSmall素体に近い体型で再現されている(要はこの娘と同じ処理)。 性格 犬らしく生真面目で従順、ひたすらマスターの役に立つことを第一に考えるタイプ。それゆえに聊か柔軟性に欠ける面も見受けられる。 投擲武器が専用武装に含まれているというのに、不得意武器とはどういうギャグなのだろうか……? セリフ一覧 + 私の活躍、お見せします! ログイン時 通常(朝) おはようございます!朝からお顔を見られて幸せです!さあ、早く行きましょう! おはようございます!朝早くから連れてってくれて、嬉しいです!今日もよろしくお願いしますね! 通常(昼) こんにちは!今日もず~っとお供しますよ!それでは、ご命令をどうぞ! こんにちは!今日もガツンと元気に、頑張って行きましょうね! 通常(夕) こんにちは!そろそろおやつの時間でしょうか!私、バトルも楽しみですが、おやつも楽しみなんです! こんにちは!お散歩行くのにいい時間帯になってきましたね!…あぁ、バトルが先でしたね!えへへ…。 通常(夜) こんばんは!これから何をしましょうか!全力で頑張っちゃいますからね! こんばんは!暗くなってもどこにいるか、私にはすぐ分かりますよ~!だって、いい匂いがするんですから~!えへへ♪ 通常(深夜) こんばんは!夜も更けてきましたが、調子はいかがですか?どんな時間でも、私はずっとお供しますからね! こんばんは!夜遅くまで頑張っているんですね。私も他の神姫に負けないよう、一緒に頑張っちゃいますからね! 年始 あけましておめでとうございます!今年の目標はもう決まりましたか?私の目標はもちろん、マスターのために一意専心でバトルに尽くすことです! (ボイス) あけましておめでとうございます!新年からお傍にいられるなんて、幸せです!今年もいっっっぱいついていきますからね! バレンタイン あ、あの…!バレンタインなので、チョコを作りました!張り切って作り過ぎちゃいましたけど…良かったら、受け取って下さい! ホワイトデー えっ!?これってもしかして、バレンタインのお返しですか?ありがとうございます!穴に埋めて後生大事にしますからね! エイプリルフール ゴールデンウィーク 夏季 暑くなってきましたね~。え?犬型といっても、私は舌を出して、体温調節なんてしませんよ! 水着キャンペーン 七夕 ハロウィン ハロウィンは、お菓子がもらえるみたいですね。いっぱいイタズラして、お菓子をたくさん取って来ますから、期待していてくださいね! 冬季 寒くなってきましたねえ。“犬は喜んで庭を駆け回る”と言いますが、寒い時はバトルでもして温まりたいです! クリスマス メリークリスマス!マスターはサンタクロースに何をお願いしたんですか?私はもちろん、マスターが欲しい武装をいっぱいくださいってお願いしましたよ! (ボイス) メリークリスマース!今日は大切な方の傍に、ずっと居なければいけない大事な日だとか。そういう訳で、私だけと、一緒に過ごしてもらえないでしょうか? 神姫の発売日 オーナーの誕生日 お誕生日おめでとうございます!今日は私が一番待ち遠しかった日なんです!私、これからもずぅーっとお仕えしますから! 神姫ハウス 命名時 呼び方変更 (→決定後) LvUp後の会話 MVP獲得 3連勝後 3連敗後 専用スキル解放時 親密度Lv5後 親密度Lv10後 親密度Lv20後 親密度Lv30後 親密度Lv40後 親密度Lv50後 親密度Lv60後 親密度Lv70後 親密度Lv80後 親密度Lv90後 親密度Lv100後 親愛度Lv1~19限定 親愛度Lv20~39限定 親愛度Lv40~59限定 親愛度Lv60~79限定 親愛度Lv80以上 頭タッチ(親密度0~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 胸タッチ(親密度0~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 尻タッチ(親密度0~19) (親密度20~39) (親密度40~59) (親密度60~79) (親密度80~) 通常会話 クリスマス限定 年始限定 武装カスタム 戦闘力Up・武器LvUP時 戦闘力Down時 素体カスタム 親密度LvUp時 限界突破時 出撃時 キャラ入れ替え バトル開始時 → バトル中 撃破時 コンテナ入手時 被弾時 オーバーヒート時 スタン時 デバフ被弾時 スキル発動時 (能力強化系) (HP回復系) (デバフ系) (攻撃スキル) (チャーミークリアボイス) 被撃破時 次出撃時 サイドモニター 応援時 交代時 被撃破時 バトル終了時 1位 → 2位 → 3位 → 4位 → カラフルコンダクト どこまでも お傍で お供します 掴み取る 勝利を この拳で 頑張った 私を 見て下さい 親密度LvUp時 マスターレベルUp時 コンテナ獲得後1位 コンテナ獲得後2位以下 レイド成功時 レイド失敗時 神姫ショップお迎え時 はじめまして!お会いできて、と~っても幸せです!私、いつまでもお供しますから! 初めまして!出会えてすっっっごく嬉しいです!これから、よろしくお願いします! ゲームオーバー時 その他 + リセット開始 神姫の想い、大切に。 + 選択した神姫をリセットします。よろしいですか? リセット開始 ええっ!リ、リセット!?う…嘘ですよね?冗談ですよね? はい を押す 嫌です!絶対嫌です!冗談でも嫌です!私、大好きだから忘れたくないんです、離れたくないんです!ずっとそばに居させてください!お願いします! はい を押す(二回目) そ、そうですか…。隣にいていいのは、私じゃない、ってことなんですね…。今まで可愛がってもらえて、幸せでした。ありがとう…さようなら。 リセット完了 初めまして!出会えてすっごく嬉しいです!これから、よろしくお願いします! リセット取消 リ、リセットしないんですね?良かったぁ…。これからも、ずっとそばに居られるだけで、私は幸せです! 親密度○時イベントのオーナーの呼び方 マスター・ご主人様・アニキ 神姫ハウス内コミュニケーション ステータス情報 親密度Lv1 ATK DEF SPD LP BST N - - - - - R - - - - - SR - - - - - UR - - - - - 親密度Lv100 ATK DEF SPD LP BST N - - - - - R - - - - - SR - - - - - UR - - - - - マスクステータス 1/s ジェム回収展開速度 ブースト回復量 ダッシュ速度 ダッシュ時ブースト消費量 ジャンプ時ブースト消費量 対空時ブースト消費量 防御時ブースト消費量 N 1500 150 960 85 70 20 90 R 1050 105 90 40 110 SR 1140 125 110 60 130 UR 1230 145 130 80 150 覚えるパッシブスキル一覧 忠実なる守り手【ハウリン専用】近接を使用した際に踏み込み距離、射程アップ スキル名説明 早熟型のパターンで覚えるパッシブスキル 攻撃力アップ[小]攻撃力を上げる ため威力増加[小]ため攻撃の威力を上げる 防御力アップ[小]防御力を上げる ダッシュブースト消費量減少[小]ダッシュする際のブースト消費を減少する クリティカル防御アップ[小]クリティカルダメージを抑える ブーストアップ[小] *要限界突破(L110)ブースト時の移動スピードアップ 体力最大値アップ[中] *要限界突破(L120)体力の最大値を上げる 通常型のパターンで覚えるパッシブスキル 体力最大値アップ[小]体力の最大値を上げる スピードアップ[小]移動する際のスピードアップ 攻撃力アップ[小]攻撃力を上げる ダウン軽減[小]ダウン時の行動不能時間が短くなる ダッシュブースト消費量減少[小]ダッシュする際のブースト消費を減少する 防御力アップ[小] *要限界突破(L110)防御力を上げる 攻撃スピードアップ[中] *要限界突破(L120)攻撃時のスピードが上がる 晩成型のパターンで覚えるパッシブスキル ブースト最大値アップ[小]ブーストゲージの最大値を上げる 攻撃スピードアップアップ[小]攻撃時のスピードが上がる ため時間減少[小]ため時間を減少する ダッシュブースト消費量減少[小]ダッシュする際のブースト消費を減少する 全能力アップ[小]全ステータスがアップする ブーストアップ[小] *要限界突破(L110)ブースト時の移動スピードアップ ため威力増加[中] *要限界突破(L120)ため攻撃の威力を上げる 神姫固有武器補正 ※レアリティが上がる毎に得意武器は-5%、苦手武器は+5%される。数字はレア度Nのもの。 得意武器 +30% 片手斬撃武器・双斬撃武器・両手斬撃・双頭刃撃武器・格闘打撃武器・下手持ちへビーガン・回復・補助・防具用武器 苦手武器 -30% 片手ライトガン・両手ライトガン・投擲武器 神姫考察 攻撃力 素のステータス自体はやや低めだが、片手斬撃武器・格闘打撃武器といったDPSに長ける武器を持て、また固有パッシブの影響で先手を取りやすいため、数値以上に優秀である。 防御力 体力こそやや高いが防御力が低く、あまり高くはない。 機動力 素でも多くの神姫のダッシュ速度を上回っており、どの型でも最終的にはパッシブでブーストアップが付く。 ブーストゲージ周りにも不備はなく、総じてやや優秀と言えるか。 総評・運用 固有パッシブは近接の踏み込み・射程を強化。近接武器の当てやすさが大きく上がる。 固有パッシブを活かして先手を取り、キルを繰り返すのがシンプルにかなり強力。各種ジェム自動回収付き装備を付ければ横吸いもケアできる。 スキルは攻撃力アップなど火力周りをサポート出来るものがオススメ。 神姫攻略法 固有パッシブで強化された踏み込みが強力。機動力を活かして逃げるのは基本的に厳しく、またDPS勝負に持ち込もうにもハウリン側の武器は強力なものが多く、先手を取られてしまった場合基本的にこちらが先に倒される。 他のプレイヤーを狙ったところを倒す、ハウリンが複数人の編成にいるなら、出撃時間を揃えさせて同士討ちさせるなど、周りを利用して対処するのが良いだろう。 バトコンが4人プレーのバトルロイヤルだという基本に立ち返って戦おう。 お迎え方 2023年1月27日~から神姫ショップに登場 アップデート履歴 コメント 親愛度1でも頭撫で喜ぶ&セクハラ怒らないの強すぎる。 -- 名無しさん (2023-01-30 14 42 56) パッシブで近接が伸びるのがめっちゃ強い… -- 名無しさん (2023-05-22 19 13 53) 名前 コメント
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1306.html
「犬子さん……」 不安な様子を隠そうともしないマスターさん。その呼びかけに、実は意味などありません。 ただただ不安で、声をかけずにはいられないだけなのでしょう。 私はそんなマスターさんに、優しく微笑みかけます。 「そんな顔をしないでください、マスターさん。いつかこの時が来るということは、以前から話し合っていた通りじゃないですか」 「ええ、ええ……この件に関しては、私たちは十分に話し合いました。 そのための準備だって繰り返してきました。 ですが……ですがそれでも、私は不安でならないのです。 こうして、犬子さんとお話しするのが、これが最後になってしまうのではないかと……!」 ……実を申せば、マスターさんのこのお言葉も今に始まったことではなくて。 幾度となく、幾度となく、同じお言葉を――同じ不安を、吐露されてまいりました。 ですがそれでも、私はその度にマスターさんのこのお言葉を真摯に受け止めます。 そこには、もったいないばかりの、私へのお気遣いが溢れているのですから。 「大丈夫ですよ、マスターさん。きっとまた、こうしてお話できます。約束しますから。 また目を覚ました私は、真っ先にマスターさんに『おはようございます』って言うんですよ。 いつものように正座して。 いつものように深々と座礼して。 だからその時は、マスターさんも一緒に、座礼してくださいね?」 「ああ……それは素敵ですね。約束しますよ」 マスターさんは僅かに不安な表情を引っ込めて、目を細めて笑いました。 まるでそれが、かなわぬ夢の光景であるかのように。 「現在時刻は23:59……もうすぐ時間です」 私は、笑顔を崩さぬままで、そういいました。マスターさんの不安を、少しでも取り除けるようにと。 「あ、はい……あの……」 マスターさんは、まだ何か言いたそうでした。ですが、その未練を断ち切るのもまた優しさと、私は学びました。だから私は笑顔のままで、最後のご挨拶をします。 「おやすみなさい、また明日」 「あ、はい、また明日」 時刻が0:00を示し、クレイドルに身を横たえた私の思考が、闇に沈んで行きます。 徐々に狭くなる視界の中で最後に捉えたのは、不安そうに私を見守るマスターさんの姿でした。 私は全身が徐々に制御を離れるなか、ほんの僅かに微笑みを浮かべます。 マスターさん…… そんな顔をしないでください 明日になったら…… きっと…… また…… 笑顔で…… system sleep... ・ ・ ・ ゆっくりと、私は起動していきます。同時にセンサーが周囲の情況把握を開始。 体内時計を確認すれば、時刻はAM07:00ジャスト。 予定通りです。 そうして目覚めた私の目に一番最初に飛び込んできたのは、 私が眠りについた時とまったく同じ姿勢で私を見守る、マスターさんの姿でした。 「犬子さん……」 「マスターさん……ひょっとして、ずっと付いていてくださったんですか?」 「あ、いや、その……申し訳ありません、不安で寝付けなくて」 照れくさそうに頭を掻くマスターさんに私は顔をほころばせつつ、いたずらっぽく言います。 「だめですよ? 今日もお仕事なんですから、しっかりお休みなさらないと」 「あー、いや、面目次第もございません」 困ったように頭を掻き続けるマスターさんですが、その顔は晴れやかです。 そしてそんなマスターさんの姿に、私は感情回路が深く温かい感覚で満たされるのを感じます。 くすりと一度小さく笑うと、私はクレイドルから身を起こし、膝をつき似非正座の姿勢になります。 そして、ゆっくりと、深々と頭を垂れます。そう、昨晩約束したように。 「おはようございます、マスターさん」 「あ、おはようございます犬子さん」 私は顔を伏せたまま、マスターさんも慌てて頭を下げる気配を感じます。 それから私たちは、どちらからともなく示し合わせたかのようにゆっくりを顔を上げました。 「それからマスターさん」 私は、マスターさんににっこりと満面の笑顔を向けました。 「武装神姫の自動起動タイマー設定の成功、おめでとうございます」 <そのよん> <そのろく> <目次>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2259.html
ウサギのナミダ・番外編 黒兎と塔の騎士 後編 ◆ 鳴滝修平の夢は、格闘技を極めることだった。 世界最強なんて見果てぬ夢だが、そう自負できるほどに強くなりたかった。 志したのは小学校に入学する時分のことだから、随分前の話だ。 鳴滝少年は、数ある格闘技の中から、中国拳法を選択した。 近所に道場があったからだ。 鳴滝少年は熱心な入門生だった。 拳法を身につけるのも面白かったし、強くなることが実感できた。 それは中学生、高校生になっても変わらなかった。 実際、強くなったと感じられたのは、喧嘩の時だった。 格闘技をやってるだけで、何かとやっかいごとに巻き込まれる。 殴り合いの喧嘩をしたが、拳法の技は使わなかった。 師匠から私闘での使用を禁じられていたからだ。 だが、使わなくても負けることはなかった。 いつか、思うさま技を使うことがあるだろうか。 そう思いながら、日々練習に励んでいた。 その生活が一変したのは高校三年生の時。 交通事故にあった。 自転車に乗っていたところで、車にはねられた。 命に別状はなかったが、自転車と左の膝が壊れた。 入院生活の後の、長いリハビリのおかげで、なんとか日常生活は不自由なくできるようになった。 でも、激しい運動はできなくなった。 格闘技なんてもってのほか。左膝は弱点ですらある。 今も道場には行っているが、それは自分を守ることに備えるためであり、以前のような前向きな気持ちではなかった。 だから、リハビリ明けの直後は、荒れた。 つっかかってくる不良やヤンキーを、片っ端から倒して回った。 自分の強さを確認するための幼稚な手段、だった。 そんな意味のない喧嘩に飽きた頃。 鳴滝は武装神姫に出会った。 はじめはくだらない人形遊びだと思った。 だが、ある戦いを見て考えが変わる。 それは、銀髪の神姫と、青色の鎧騎士の対決だった。 剣による近接格闘戦。 その動きは人間を超越し、神業の域に達している。 鳴滝はふと思う。 このなんでもありの戦闘領域で、格闘技はどれほどの力を持ちうるのだろうか。 格闘技だけでどこまで上が目指せるのか。 そんな思いつきが、鳴滝の次なる夢になった。 騎士型サイフォス・タイプを購入し、ランティスと名付けた。 そして、格闘技の修練をさせた。 実際のところ、徒手空拳で戦場に立つのは、非常に厳しかった。 はじめはろくに勝てなかった。 だが、鳴滝はあきらめることを知らず、ランティスは鳴滝の夢を愚直に追い続けた。 やがて、自分たち流の戦い方を見い出す。 そしていまや、『塔』でランティスにかなう神姫はいない。 鳴滝はランティスに感謝している。 鳴滝の夢はかないつつあるのだから。 ◆ 手甲から飛び散る紫電の向こう。 正面に立つ神姫の姿を認めて、ランティスは愕然とした。 「貴様……どうして……」 ティアは雷迅弾を放ったときそのままの姿で立っている。 ありえない。 超速の弾丸は、間違いなくティアが立つ場所を通過している。 なぜあの黒い神姫は五体満足で立っていられるのか。 「どうして、どうしてそこに立っていられるっ!?」 ランティスの叫びに、ティアは困ったような視線を向けるばかりだった。 ◆ ランティスと鳴滝の様子に、観客たちもどよめき出す。 シスターズの四人と安藤も、首を傾げていた。 彼らは皆、ティアが何をしたのか、全く見えていなかった。 安藤は、シャツの胸ポケットにいる、彼の神姫オルフェに尋ねた。 「オルフェ……ティアが何したか、見えたか?」 「見えました……けど……」 人間では追いきれなかった動きも、神姫の目では捉えられたらしい。 だが、オルフェは釈然としない表情で首を傾げていた。 「ティアは何をした?」 「何をしたというか……特別なことは何も」 「え?」 「ただ普通に……いつものようにステップでかわしただけです」 「は?」 安藤はオルフェの言っていることがすぐには理解できなかった。 そこへ銀髪の神姫が口を挟む。 「マスター安藤。確かに今のティアの動きは、半円を描く普通のステップでした。 ……ですが、ティアは、出来うる限り最速かつ最小半径でのステップで、雷迅弾を回避したのです」 「最小半径って……」 安藤には想像もつかない。 つまり、超音速で飛来する球体を、紙一重で見切ってかわした、ということでいいのだろうか。 「……っていうか、雪華は何で俺のこと知ってるんだ?」 「ティアと同じチームの神姫とマスターの情報は調べ上げてあります」 さも当然といわんばかりの雪華であった。 □ ギャラリーがどよめく中、俺はむしろ不思議な気持ちでいた。 別に何も特別な技を使ったわけじゃない。 その証拠に、俺からティアへの指示はたった一言、 「ステップでかわせ」 だった。 ティアはそれを忠実に実行しただけだ。 確かに最近、ティアには近接戦用にステップを練習させていたが……。 「遠野……今のはなんて技だ……?」 大城も呆けたように俺に聞く。 まわりを見ると、みんな俺に注目していた。 俺は小さくため息をつく。 「名前を付けるほどのことじゃないんだが……そうだな、『ファントム・ステップ』とでも名付けようか」 「ファントム・ステップ……」 うめくように鳴滝が言う。 俺は頷いた。 「そう。だが、ファントム・ステップは単発の技じゃない。連続でやると……こうなる」 バトルロンド筐体の画面の中。 ランティスがティアに向かって突進していくところだった。 ■ 「たった一発かわせたからって……いい気になるな!!」 ランティスさんが叫びながらわたしに向かって突っ込んでくる。 どうすればいい? 間合いを取ってかわすのは簡単だけれど。 そう思ったとき、マスターから指示が来た。 『ティア、練習してたあのステップですべてかわせ』 「はい」 『隙あらば反撃だ。練習の成果、見せてやれ』 「はいっ!」 やっぱり、あのステップ……ファントム・ステップと名付けられたのは後で知った……を試すために、この試合は銃器がセッティングされなかったんだ。 ファントム・ステップは、わたしが最近集中的に練習していた技。 わたしが近接格闘戦をするようになってから、マスターが必要だと言って、練習するようになった。 できるだけ素早く、できるだけ相手から離れずに、ステップでかわす。 それが基本。 ランティスさんが両手を顎につけた体勢で踏み込んでくる。 間合い。 左右のパンチから左脚のハイキック。 流れるように淀みのないコンビネーション。 わたしは後ろに下がるステップで、左右のパンチをかわし、半円のターンでキックをはずす。 ステップは全部、攻撃に対して一定の距離。 空を切るハイキックが風を巻き、わたしの前髪を揺らす。 わたしはランティスさんを見た。 大きな動作の後なのに、もう隙をつぶして構え、攻撃態勢に入っている。 反撃の暇はない。 ランティスさんは躊躇なく踏み込んできた。 今度はさらに深く。 腰だめの右拳を斜め上に突き上げるようなアッパーカット。 それも半円のターンでかわす。 すると今度は、踏み込みながら、左腕で細かいパンチを三発放ってきた。 だけどそれは、三発とも同じ距離。 それをかわすと、また踏み込んで、右のパンチを二、三発。 わたしは右左と順番に放たれるパンチを、ジグザグのステップでかわしていく。 かわすたびに、ランティスさんの表情が険しくなっていく。 ◆ ランティスはティアに向かって膝蹴りを繰り出した。 これもかわされる。 だが、これは誘い。 上げた右膝を降ろさず、空手の側方蹴りに移行する。 突然間合いは伸びる。どうだ。 だがそれも、半円のターンでかわされる。 「くっ……!」 ばかな。 こんなことはありえない。 ランティスはこれでも考えながら攻撃をしている。 技のスピード、キレ、間合いの変化、技の変化。 もちろんフェイントも交えている。 だが、そのことごとくをかわされる。 しかも一定の間合いで。 ティアは必ず踏み込みが届く間合いで、自分の正面にいるのだ。 当たるはずの攻撃が当たらない。 あるはずの手応えがない。 まるで亡霊を相手にしているようだ。 「お、おおおおおぉっ!!」 ランティスは吠えた。 左右のハイキックを順に放ち、さらに振り上げた左脚を上から落とす、かかと落とし。 それも、なめらかなS字のターンが命中を許さない。 だがランティスは止まらない。止められない。 今度は降ろした左脚を支点に、旋風のようなミドルキックを放つ。 攻撃範囲の広さは、ランティスの持つ蹴り技でも随一だ。 しかし、それもかわされる。なんと、ランティスが振るうつま先を、ターンで回り込むようにして回避した。 ランティスはさらに蹴る。同じ方向から、跳ねるように、リズミカルに、旋風のような蹴りを。 しかし、当たらない。 黒兎の神姫は、目の前を、亡霊のように舞い続けている。 「く、くそおおおぉぉっ!!」 自分の身につけた技のすべてが、たった一つの技に否定される! 技を一つかわされるたび、心が絶望に浸食されていく。 ランティスは心を削るような思いで攻撃を続ける。 ◆ 「すごい……」 安藤は思わずつぶやいていた。 ランティスの息もつかせぬ連続技。 そこにはあらゆる格闘技の技が詰め込まれていた。 キックボクシングのコンビネーション、ボクシングのパンチに、ムエタイ、空手の蹴り技。 かかと落としはテコンドーの動きだったし、今見えるダンスのような回し蹴りは、たぶんカポエラだ。 格闘技をちょっと知る程度の安藤にさえ、ランティスの技の多彩さがわかる。 だが、それ以上にティアがすごい。 ランティスのあらゆる技は、タイミングもスピードもリーチもすべて違っている。 だが、ティアはそのことごとくを紙一重でかわし続けているのだ。 しかも、ただ一つの技……ステップで。 その様は、まるでパートナーとダンスをしているかのようだった。 「ちょっと、涼子? 大丈夫?」 美緒が小さな声を上げた。 見れば、涼子が頭を押さえながら、大型ディスプレイに見入っていた。 顔色は真っ青だ。 「すごい、なんてもんじゃ……」 涼子は、震える声で、言った。 「ティア……かわしながら、誘導して……塔の外周を回ってる……」 「な……」 安藤はすばやく大型ディスプレイを見る。 ランティスの右上段蹴りが途中で変化し、下段蹴りになって、ティアのレッグパーツを狙う。空手の蹴り技。 しかし、つま先は、ティアのランドスピナーをかすめたのみだ。 そう、二人の攻防はずっと続いていて、途切れることがない。 周囲を壁に囲まれた塔の中で、移動しながらの攻防を続けるには、塔の外周を回るように移動するしかない。 そして、二人の神姫はそれを忠実に実行している。 移動の舵取りは、ランティスの前方にいて、かわし続けるティアがしているはずだった。 涼子は戦慄する。 神業なんてレベルじゃない。 ランティスの打撃は、どれ一つとっても、達人の域を越えている。 それを正面でかわしながら、行き先を誘導さえできるなんて。 武道をたしなむ涼子だからこそ、目の前のバトルが驚愕のレベルにあることを見抜いていた。 「でも、ティアはなんだってそんなことを……?」 「おそらくは、ランティスの技を引き出すためです」 素朴な疑問に答えたのは、全国チャンピオンのマスターだったので、安藤は少なからず驚いた。 だが、当の高村はそんなことを気にもかけず、気さくな様子だった。 「武装神姫にとって、技とは、マスターとの絆が生み出す力です。 マスターの想いをバトルで具現化するための技術……それが武装神姫の『技』なのです。 装備に頼らず、技を駆使して戦うという点において、あの二人はとてもよく似ています。 だからなのでしょう。ティアはランティスのすべての技を……つまり、マスターの想いと二人の絆のすべてを引きだし、受け止めようとしているんですよ」 安藤は高村の言葉に途方に暮れながら、また大型ディスプレイに目を移す。 ランティスが攻め、ティアがかわす。 その姿はダンスパーティーで踊るパートナー同士のようにも見える。 それほどに華麗で美しい動き。 「ランティスだけではありません。ティアもまた、技のすべてを出し尽くそうとしている……」 ◆ 気付いているだろうか? 雪華は、画面上のランティスを見つめ、思う。 ティアのファントム・ステップは、ただ一つの技、ではない。 ステップやターンを駆使して、近接距離を一定に保つ。それがファントム・ステップだ。 ティアはあらゆるステップ、あらゆるターンを駆使して、ファントム・ステップを成立させている。 ランティスが「格闘」を極めた神姫だとすれば、ティアは「滑走」に特化した神姫だ。 ファントム・ステップは、ティアがこれまで身につけてきた、膨大な「滑走」の技の上に成り立っている。 ランティスはそれに気付いているだろうか。 画面上の彼女の表情からは、苦悩と焦燥が見て取れる。 雪華はランティスが嫌いなのではない。愚直なまでにマスターの夢を追い求める姿は、好ましいとさえ思う。 だからこそ、彼女には気付いてほしい。 技同士のバトルに、神姫の出自など、関係がないことを。 「それにしても……」 雪華はつぶやき、ティアの姿を見つめる。 表情がほころぶのと同時、身震いする。 雪華と戦ったときよりもなお、彼女の技は冴えていた。 あのとき、雪華の『レクイエム』をかわしたあとの神懸かり的な機動が、すでにティアのベースラインの動きになっている。 ティアは確実に進化している。 それが嬉しい。 そして彼女に心からの尊敬を抱き、そしてまた戦ってみたいと、雪華に思わせるのだった。 ◆ 鳴滝は喜びに震えていた。 高村について、こんなゲームセンターまでやってきて正解だった。 秋葉原での戦いにうんざりしていたのは、ランティスだけではない。 マスターである鳴滝もまた、火力と物量でばかり挑んでくる対戦者たちに飽き飽きしていた。 だが、ティアは違った。 どんな神姫とも違う機動力で、彼女だけが持つ技を駆使してランティスと戦っている。 ランティスの技に、技で挑んでくる神姫がついに現れた。 そう、待っていた。ずっとこんな相手が現れるのを待ち望んでいた。 ランティス、今お前はどんな気持ちだ? どんな気持ちで戦っている? ……なんでそんなにつらそうな顔をしている。 こんな好敵手と出会えることは、俺たちのような輩にとっては最高のことじゃないか。 もっと喜べ。 そしてもっとバトルを楽しめ。 このバトルの先に、俺たちの見たかった地平が、きっと見えるだろう。 ◆ そんなマスターの想いとは裏腹に、絶望と焦りを顔に浮かべながら、ランティスはティアに打ち込み続けた。 しかし、どんな打撃も、どんなコンビネーションも、ことごとく回避されている。 『ランティス』 「師匠!」 彼女は鳴滝をマスターと呼ぶよりも、師匠と呼んだ方がしっくりくる、と思っている。 『なぜあれを出さない』 「……ですが、この娼婦の神姫に、あの技を出すほどでは……!」 『出すほどだ。現にお前の打撃は、一発もティアに当たってないぞ?』 「……っ!」 『もう認めろ。ティアは同じステージに立つ資格のある好敵手だと。出し惜しみはするな。むしろ、すべてを見せつけてやれ』 「……」 ランティスは迷う。 師匠の言葉は理解できるが、「心」が納得しないのだ。 あの下賤な神姫に、師匠から直に教わった技を使うことにためらいがあった。 しかし、もはやランティスは覚悟を決めるしかなかった。 奥の手を出す覚悟を。 この試合、敗北は決して許されないのだから。 「ハアアアアアァァッ!!」 迷いを振り払うように、気合いを入れる。 そして、ティアに向けた一撃の踏み込み。 瞬間、何かが爆発したような音と共に、地が揺れた。 ■ ランティスさんが深く踏み込んでくる。 その脚が着地した瞬間、地響きが来た。 「わっ」 一瞬、地面が揺れる。 ランドスピナーが傾く。 横構えになっていたランティスさんが腰を落とし、両手の掌を彼女の両側に突き出した。 不安定な姿勢ではあったけど、わたしは間合いを大きめに取るようにランドスピナーを走らせ、からくもランティスさんの一撃をかわした。 彼女と対峙する。 そして、ぞっとした。 ランティスさんの立っている、その足元。 踏み込んだ場所がランティスさんの足形に窪み、地面に放射状のひびが入っている! いやな感じがする。 いまの掌打はからくもかわせたけれど、受けていたら、どんなことになっていただろう。 わたしに想像する間も与えず、ランティスさんがまた来た。 またしても低く、深い踏み込み。 今度はもっと深い。まるで、身体全体でぶつかってくるような……。 わたしの位置は壁際で、もうぎりぎりでかわす余裕はなかった。 ランティスさんを大きく回り込むように回避する。 正解だった。 小手先の技じゃなかった。 ランティスさんは踏み込んで背中を打ち付けようとしてきた! 背中で攻撃、なんて、聞いたこともない。 わたしが今いた場所を、ランティスさんの背中が通過して、そのまま塔の壁に激突する。 見間違いだと思う、でも。 ランティスさんの背中が当たった瞬間。 高い高い塔の壁が、一瞬、たわんだように見えた。 □ まるでミサイルが直撃したかのような爆発音。 ランティスを震源地に、短い地震が起きて、ディスプレイの映像を揺らす。 バーチャルで構成されたステージのカメラの位置は動かないはずだから、塔全体が揺れたのだ。 ランティスが姿勢を戻して、ティアと対峙する。 その背後。 いましがた、ランティスが背中を打ち付けた壁が、彼女の背中の形でクレーターになっている。 クレーターのすそ野から、大小のひび割れが大きく広がっていた。 そして。 その壁が粉々に砕け、大きく崩れ落ちた。 「八極拳か……これほどの破壊力とはな」 あの特徴的な、背中からの打撃に見覚えがある。確か『鉄山靠』とか言う技だ。 八極拳は中国拳法の一流派だ。 俺も詳しくは知らないが、震脚と呼ばれる強烈な踏み込みから生み出される破壊力が特徴だと聞いたことがある。 鳴滝が感心したように、俺に言う。 「よく知っているな。ランティスの八極拳は俺の直伝だ」 「君も拳法をやってるのか。なるほど、だから師匠、と呼ばれてるんだな」 「そうさ。……どうする、遠野。踏み込むたびに地面を揺らされて、ファントム・ステップを続けられるか?」 鳴滝は不敵に笑って、俺を挑発する。 だが、不愉快ではない。 鳴滝もこのバトルの駆け引きを楽しむために、俺を挑発している。それがわかる。 ならば一つ、俺も楽しんでみようか。 「試してみるがいい」 「ふふ……八極拳の技が単発だと思うなよ。連続でやると、こうなる」 鳴滝の言葉と同時、ランティスが再び前に出た。 完結編へ> Topに戻る>
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/2125.html
ウサギのナミダ ACT 1-12 □ 海藤がコーヒーカップをゆっくりと配り、そっと溜息をついた。 「僕がバトルロンドをやめた理由……言ったことなかったっけ?」 「ないな……君から自分のバトルの話自体、聞いたことがない」 そうか、とコーヒーを一口飲んで、また一つ溜息をつく。 海藤も以前はバトルロンドのプレイヤーだった。 実力もかなりのものであったらしい。 だが、俺が神姫を血眼になって探すようになった頃には、すでにバトルロンドをやめていた。 だが、興味がなくなったわけではないらしい。 今でも、主要な大会の映像はチェックしているようだし、バトルロンド用のパーツや改造方法なんか俺より詳しいくらいだ。 だからなおのこと、俺には海藤がバトルをやらないことが解せない。 「……あまり、格好のいい話じゃないんだ」 「……今の俺以上に格好悪いマスターはいないから安心しろ」 苦笑しながら、海藤はさらにコーヒーを一口。 そして、観念したように目を閉じた。 「僕がバトルロンドをやめた理由はね……バトルロンドを嫌いになりたくなかったからだよ」 かつて、俺も通うあのゲームセンターに、腕利きの神姫プレイヤーがいた。 空中戦闘タイプで、近距離、遠距離共にこなす万能タイプ。的確な戦術と、高度な技術に裏打ちされた戦闘スタイル。 マジックマーケット社製の武装パーツを中心に組み上げられた武装は、エウクランテの羽とイーアネイラの下半身パーツを中心にして、水中を泳ぐがごとく自在に飛行することが出来た。 勇猛果敢な戦闘スタイルと、空中を自在に翔る姿から、『シードラゴン』とあだ名されていた。 それが、海藤仁と神姫・アクアだった。 「シードラゴンか……聞いたことあるな……三強の一人が、同じような武装をしている」 「あの装備は、羽と鰭の連動が難しいんだけど……へぇ、使いこなせる神姫がいるなんてね。会ってみたいな」 「……やめておいた方がいいぞ。人間性に問題があるから」 シードラゴンは公式大会にも積極的に参加した。 公式のポイントも稼ぎ、ホビーショップや神姫センターで行われるローカル大会でも勝つようになり、少しずつ知名度も上がっていった。 いきつけのゲーセンではトッププレイヤーの仲間入りを果たし、シードラゴンの噂を聞きつけてゲーセンにやってくる神姫プレイヤーもいた。 そして、来たる全国大会。ここC県エリアの代表候補に、シードラゴンのアクアの名前が挙がっていた。 「その当時のこと、『ヘルハウンド・ハウリング』のマスターなら知ってるかな」 「ああ、彼はまだバトロン現役なんだ? がんばるなぁ」 「最近は三強の一角で、ちょっと天狗になっているけど」 「僕がやってるころはまだ、その二つ名で呼ばれはじめた頃だったよ」 そして、待ちに待った全国大会の地区予選の時がやってきた。 公式の神姫センターで開催される大規模な大会。 県内から有力な神姫が集まり、バトルを繰り広げる。 海藤とアクアは、意気揚々と大会に臨んだ。 シードラゴンは順調に駒を進めた。 そして準決勝。 いずれ劣らぬ武装神姫ばかりだったが、マスターと神姫の連携、戦術はシードラゴンが頭一つ抜きんでていた。 C県エリア代表はシードラゴンのアクアだと、誰もが信じていた。 海藤も優勝する自信があった。 「だけど……僕たちは準決勝を戦えなかった」 「……なぜ?」 「他の準決勝進出者からクレームが入ったんだ。違反行為をしている可能性がある、ってね」 「そんなこと……君がしたとは思えない」 海藤との付き合いは高校一年の時からだが、そういうルール違反に手を染めるような性格でないことはよくわかっている。 「うん、僕もしていない。しているはずがないんだ。でもさ……その準決勝進出の三人のマスターが口をそろえて抗議したんだ。 その理由がさ……おかしいんだよ」 海藤は笑った。ものすごく苦いものを飲んで、その味をごまかすような表情で。 「イーアネイラだから」 「え?」 「イーアネイラが、準決勝まで勝ち上がれるはずがない、そんなに強いはずがない、何か問題行為をしているに決まっている……ってね」 「な……」 俺は驚きを通り越して、あきれかえった。 そんなバカな話があるか。 特定の神姫が特別弱くて、決して勝ち上がってこられないなんて。 「そんなの、いいがかりもいいところじゃないか」 「うん……でも、その抗議は受け入れられた」 「……は?」 「それで、大会のスタッフが、準決勝前にアクアのボディと武装をチェックした」 アクアがテーブルの上から、心配そうに自分のマスターを見上げている。 それを見て、俺の胸が痛んだ。 気軽に振っていい話じゃなかった、と今更後悔した。 「そしたらさ……武装に塗った塗料から、ごく微量のレーダー攪乱効果のある成分が見つかったって。 確かに、アクアの武装をネイビーブルーで塗装していたんだけどね……」 「……何の塗料使っていたんだ?」 「普通の、ホビーショップで売っている塗料だよ。一番ポピュラーなやつ」 「そんなの、他に使っている神姫だっているはずじゃないか!」 あんまりな話に、つい声が大きくなってしまった。 すまん、と謝り、俺は下を向いて、海藤の話しに耳を傾ける。 「うん……だから、僕も抗議したよ。でも通らなかった。 もし準決勝を戦いたければ、塗装をしていない武装だけ使いなさいって言われてね」 視界に、海藤の手が見えた。 握った拳が白くなっている。 強く、握っている。今思い出しても、拳を握ってしまうほど悔しかったのだ。 「そんなことをしたら、アクアは何の装備もなく、素体だけで戦うことになってしまう。 それは無理だ。だから……棄権したんだ」 「……」 「で、その準決勝に出た三人が、実は秋葉原の神姫バトルミュージアムの出身でさ……」 「ちょっと待て。県内でバトルしてたわけじゃないのに、C県エリアの代表大会に出てたのか!?」 「そうだよ」 「そんな……それは筋が通らないんじゃないのか」 たとえば、高校のインターハイとかで、個人競技の選手が、都内の高校に通っているのに、別の県のインターハイ予選にエントリーして優勝してしまう。 それを「県の代表」ということが出来るのか。 「だけど、バトルの取得ポイントさえ足りていれば、どこの神姫センターの大会にでもエントリーできるんだ」 「そんなバカな……」 「そうなんだから仕方がない。 それで、そのバトルミュージアムでは、激戦の秋葉原を避けて、あちこちの郊外のエリア大会に遠征組を派遣したんだ」 「そんな……その連中が勝ち上がったら、全国大会じゃなくて、そんなの、ただの身内の大会じゃないか……」 「そういうのは少なからずあるよ。おそらく、関西でも、有力な神姫センターやゲーセン、ホビーショップでは同様のことをやってる。そうやって、同じ店から全国大会出場者が一人でも多く出れば、箔がつくしね」 公式大会に出る気は最初からなかったので、海藤の話は初耳だった。 てっきり、参加する大会のエリアに在住していなければ、そのエリアの大会には参加できないものだと思っていた。 今の海藤の話に、俺は納得できなかった。 全国大会ならば、そのエリアを代表する神姫が出場するべきであって、他のエリアから乗り込んでくるなんていうのは、ルール違反じゃないのか。 激戦区の選手達は、確かにレベルが高いのだろう。 地方のゲームセンターでならしているだけでは、勝てないのかもしれない。 だからといって、そのエリアに乗り込んでいって、エリア代表になるというのは違うと思う。 実力があれば何をしてもいいというのか。 その実力がない、地元の神姫プレイヤーが悪いというのか。 見ず知らずの遠征チームがやってきて、実力で大会を勝ち抜いて、地元を代表しますと言ったところで、地元の神姫プレイヤー達は心情的に納得が行かないだろう。 それに、よく見知った神姫が別のエリアから勝ち上がってきたところで、つまらないではないか。 別のエリアには、様々な戦い方をする、未だ知られていない実力者がいて、戦うことが出来るかもしれないのに。 俺が悶々と考えを巡らせていると、しばらく黙っていた海藤が口を開いた。 「まあ、遠野の言いたいこともわかるよ。僕もそうあるべきだと思ってる。 でも、現実は違う。 それで、さっきの続きに戻るけど……秋葉原の神姫バトルミュージアムって、あの鶴畑財閥の経営なんだ。 しかも、準決勝の三人は、鶴畑の次男坊・大紀の舎弟だった」 「っておい……それじゃあ、そのいいがかりは、まるっきり仕組まれてたんじゃないのか!?」 鶴畑財閥といえば、神姫のオーナーで知らない者はいないというほど有名だ。 あらゆる神姫関連の製品を扱っているし、公式大会の大手スポンサーでもある。 鶴畑財閥の御曹司三人は、いずれもバトルロンドのプレイヤーで、こちらも非常に有名である。 次男の大紀は、あまりいい噂を聞かないことで有名な人物だ。 大手スポンサーの鶴畑財閥と、その経営する神姫センター、そこから送り込まれた遠征組と、バックにいる次男坊……誰が考えても、海藤へのいいがかりは策謀だったとしか思えない。 「だけど、証拠がない」 興奮してしまっている俺に対し、海藤は至って冷静だった。 「大会の時は時間もなかったしね……真相は誰にも分からずじまいさ」 「君らだけが貧乏くじを引いて……それで、秋葉原の連中がC県の代表になったって言うのかよ……」 やりきれない話だ。 「大会の後、僕はゲーセンに行くのをやめた……翌日行ったら、みんなに卑怯者呼ばわりされてね……」 「……あそこのゲーセンはそんなのばっかりか」 「まあ、端から見てればそう見えるんだろうし……。 それで、僕はバトルロンドをやめることにした。 僕はバトルロンドが大好きで、今でも情報はチェックしているけど、もう自分でやりたいとは思わない。 実力ではない……何か別のところで勝負が決まっていることが、やっぱり、どうしても、許せなかったんだ。 このまま続けていれば、きっとバトルロンドが嫌いになる。バトルロンドを好きでい続けたいから……やめたんだ」 気の優しい海藤であっても、そこまで許せないものがあるのかと、正直驚いた。 そして、俺は自分が少し恥ずかしくなった。 「すまん……俺ばっかり、辛い目に遭ってるような顔をして……」 「何言ってるんだ。誘ったのは僕の方さ」 コーヒーを淹れ直そう、と空になったカップを回収し、海藤は立ち上がった。 俺があらためてドーナツの箱を開けると、テーブルの上にいるアクアと目が合った。 少し思い詰めたような表情。 アクアは思い切ったように、俺に言った。 「マスターは……それでも本当は、バトルロンドをやりたいのだと思います」 「え……」 「こら、アクア」 コーヒーを淹れて戻ってきた海藤がたしなめる。 「余計なこと、言うもんじゃない」 「ですが……マスターは、あのクイーンの戦いぶりを見て、目を輝かせていたではありませんか。まるで子供のように」 「クイーンのバトルを見て、ワクワクしない武装神姫ファンはいないよ」 海藤は俺の前にコーヒーを置いた。 そして言う。 「クイーンはすごいよね。あの秋葉原で、正々堂々戦って、そして全国出場を決めているんだ。尊敬するよ」 「そうか、秋葉原は鶴畑の……」 海藤は頷いた。 言ってみれば、秋葉原は鶴畑の本拠地だ。 そこで、彗星のように現れた神姫が、フェアプレーで、実力で勝ち上がったのだ。 海藤には大いに思うところがあるのだろう。 「いま仮に、前の装備を引っ張りだしてきて対戦しても、大した勝負にならない。だから対戦する気もないけど、協力はしてあげたいと思うよね」 そもそもクイーンと会う機会もないだろうけど、と海藤は苦笑した。 海藤の家を出るときには、雨が降っていた。 「これを使いなよ」 ビニール傘を貸してくれた。ありがたい。 雨の中、駅に向かう道すがら、俺はまた考えを巡らせる。 バトルロンドをやめた後、海藤はもう一つの趣味である熱帯魚の飼育が行きすぎて、ついには水族館でアルバイトをするようになった。 海藤は大学生だが、水族館に入り浸り、いまはほとんど大学に顔を出していない。 その水族館での仕事に、アクアをアシスタントとして使っている。 それがお客の目に留まり、少しずつ話題になった。 魚たちと一緒に水槽を泳ぐアクアの姿は、まさに人魚姫のようだ。 「K水族館の人魚姫」と呼ばれ、神姫の雑誌の表紙を飾ったこともある。 海藤はバトルロンド以外でアクアが活躍できる場所を見つけたのだ。 彼は俺に言った。 「神姫が活躍できる場所は、バトルロンドだけじゃない。戦う以外の道も選択肢だよ」 そうなのかもしれない。 俺はバトルロンドにこだわっていたが、そうでない道をティアに歩ませることが出来るのかもしれない。 ティアを大切に思うなら、もうこれ以上傷つけたくないと思うなら、そう言う道を探すのがマスターたる俺の仕事かもしれない。 海藤とアクアのように、バトルでなくても、自分達の活躍の場を得て、笑い合うことが出来るなら……それは幸せなことなのだろう。 そんなことを考えているうちに、気がつくとアパートの前にいた。 ポケットから鍵を出す。 扉を開ける。 慣れきった、無意識の動作。 「ただいま」 返事はなかった。 少し寂しい気持ちに捕らわれる。 ついこの間まで、ティアが来るまで、返事なんてなかったのに。 ティアの「おかえりなさい」という控えめな挨拶が、もう耳に慣れきっていたのだ。 ……なんで返事がない? ティアは自主練で留守番じゃなかったのか!? 俺は急いで靴を脱ぎ、玄関を駆け上がる。 部屋に飛び込んだ。 「ティア!?」 そこには誰の姿もない。 静まり返っている。 俺の荒い息と時計の音がやけにうるさい。 夕方の薄暗い部屋の中、PCのディスプレイの明かりが浮き上がって見える。 俺はマウスを操作し、スクリーンセーバーから通常画面に復帰させる。 マウスの手触りに違和感を覚え、机の上を見た。 「水滴……?」 キーボードやマウスの上のそこかしこに、小さな水滴が点々とついている。 なぜ水滴が……。 俺は不審に思いながら、復帰したディスプレイ画面を見た。 背景はウェブブラウザだ。どこかの巨大掲示板が画面に映されている。 その手前にワープロソフトが立ち上がっている。 短い文面。 「……ばっ……かやろ……っ!!」 次の瞬間、俺はアパートを飛び出していた。 外は雨。 傘を忘れている。 知るか! 俺は雨の中を走る。 ワープロで書かれた、それは短い置き手紙。 マスター もうこれ以上迷惑かけられません さようなら ティア 次へ> トップページに戻る
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/1924.html
出会い&登校2 アンジェラスの視点 遅刻にならないように、軽く走り続ける私達。 先頭はクリナーレがランニング気分で走っている。 あの子は何でも楽しむような思考回路してるから少し羨ましい。 それに比べて私はいつも気苦労ばかりで疲れる一方。 今日だってそうです。 いきなりシャドー=アンジェラスが出てきたり、いきなり遅刻になりそうになったり…。 いやいや、こんなネガティブな気持ちじゃ高校生気分を味わえません! 何事にも前向きに考えなければいけない! 私がそう決意した時、クリナーレがちょうど十字路に差し掛かった。 その時だ。 ドンッ! 「ウワッ!?」 「……むぎゅ」 クリナーレが誰かとぶつかりました。 あーもう、前方不注意ですよ。 「これで相手がパンを口に銜えていて、尻餅をついてドライがウッカリ相手のパンツを見てしまったら、まるでラブコメみたいね♪」 シャドーが何処かの漫画にでてきそうなシチュエーションを言う。 ていうか、そのシチュエーションは古くない? それにラブコメなのかなぁ? 更に言えば百合になっちゃうよ、クリナーレは女の子だし、相手の声からして女の子だし。 …今思えばなんで武装神姫には男性がいないのでしょうか? って、そんな事を考えてる場合じゃありません! 倒れた女の子を大丈夫かな! 「大丈夫ですか!?」 私は女の子に近づき喋る。 ぶつかってしまった女の子はクリナーレと同じ悪魔型ストラーフ。 白黒のブレザーを着ていて無表情。 「……痛かった」 そう言いながら立ち上がるストラーフ。 …あれ? 何処かで会った事があるような気がする。 「大丈夫ですか? アイゼン」 「そちらの方も、お怪我はありませんか?」 他の人も居たみたい。 犬型ハウリンと砲台型フォートブラッグでした。 彼女達は青色のブレザーを着ていてストラーフに対して心配そうに接する。 それに思い出しました、アイゼンは前にバトルした事がある神姫でした。 バトルは残念ながら途中で私は気を失ってしまい、気がついたら負けていました。 「あなたは確か…アンジェラスでしたっけ?」 「あ、え~と、サラ…ですよね。こんにちは。七瀬都さんの妹の神姫ですよね?」 「一応そうです。あなたとは少ししか会っていませんが」 砲子のサラ。 前回の企画でバトル参加した神姫。 あの時のバトルでは顔しか会わせていませんでしたが、サラは私の事を覚えてくれてたみたいです。 なんだか少し嬉しいです。 「ところでサラ、アイゼンと犬型ハウリンは誰ですか?初めて会うお方だと思うのですが」 私が視線を変えながら言うとサラは察してくれたのかニッコリ笑って答えてくれた。 「紹介します。こちらのストラーフはアイゼン、あとその犬型はそのまんま犬子ですね」 サラが私達に二人を紹介していく。 こちらも紹介した方がいいのかな? 「お願いします。正直ハルナから何も知らされていないのですよ。…まったく、ハルナもハルナです。いきなり都にわたしごと強制連行されて、その挙句がこんな状況ですし…帰ったらシュールストロミングの刑ですね」 「シュールストロミングの刑…ですか…。あ、では今度はこちらから紹介していきますね」 私は軽くクリナーレから順に紹介していった。 …。 ……。 ………。 そして最後のシャドー=アンジェラスの順番になって紹介に困った。 彼女あまりにも危険な存在。 どー皆に説明したらよいのでしょうか? 「アタシ自ら紹介するよ♪コッホン…どーもこんにちは♪♪アタシはもう一人のアンジェラス、シャドー=アンジェラスでーす♪アンジェラスという名前が二人いるからシャドーって呼んで」 バシン! 突如と響く拳を受け止める音。 シャドーの自己紹介中にアイゼンが左ストレートパンチをはなったのだ。 それを軽やかに受け止めるシャドー。 アイゼンの無表情が少しだけ変化し怒ってるように見える。 「お久しぶり~、アイゼンちゃん♪会えて嬉しいわ♪♪」 「……来るんじゃなかった」 場の空気が…険悪なムードなっていく。 このままでは駄目です。 折角の上機嫌のシャドーが不機嫌にでもなったらヤバイ。 この場に居る全員を惨殺しかねないですし、ここは私が張り込んで! 「あ~ん♪本当に可愛い♪♪抱きついちゃお♪♪♪」 「……むぎゅっ!?」 素早くアイゼンの後ろに回り込み抱き着くシャドー。 あ、あれ? 不機嫌にならない? というか…アイゼンに抱き着き、いい子いい子しながら頭を撫でています。 アイゼンも怒っていた表情から無表情になっています。 困った顔はしないのですね。 「アイゼン可愛いよアイゼン」 「……邪魔、……すごく邪魔……」 何処かで聞いた事があるセリフを言うシャドー。 とりあえず、ジャレついてるのなら大丈夫そうですね。 …アイゼンにはかなりお気の毒ですけど。 ごめんないさい、アイゼン。 「う~ん…」 「な、なんでしょうか?」 クリナーレが腕組しながら犬子さんを凝視する。 それに対して犬子さんはなにやら困り顔。 「ボクさぁ、前から思ってる事があるんだけどー」 「はい?」 「犬型と猫型はどうして尻尾を随時装備していないのかなぁ~と思うだよね」 そう言いながらクリナーレは犬子さんのスカートを捲くりあげる。 ちょっ、なにやっちゃってくれてるのよクリナーレ! 「ハワワワワッ!?」 いきなりスカートを捲り上げられた事によって犬子さんが驚愕する。 そりゃそうですよ。 誰だってあんな恥ずかしい事をされたらビックリしますよ。 ていうか止めなさい! 私がクリナーレを止めようとした瞬間。 「姉さんの馬鹿!」 「タワバッ!?」 クリナーレの妹、パルカが右踵落しをかました。 命中と同時にメリッという鈍い音が聞こえ、脳天を直撃した事によって地面に倒れ悶絶するクリナーレ。 それからパルカは踵落しをした後、捲くられたスカートを丁寧に戻し犬子さんに頭を下げる。 …たまに思うのだけれど、ときどきパルカの事が怖くなる。 いつもは怯えてるというか、ビクビクしてるけど非常時になる行動が大胆になりますね。 特に姉のクリナーレに対する行動が。 「パルカはあぁ見えてもヘタレのくせに度胸がありますから」 「…それ、矛盾してない?」 「それとお姉様、言いづらい事が一件あるのですが…」 「うん?何??」 「学校…遅刻しますわよ」 「…アアアアァァァァーーーー!?!?」 私が叫んだ事によって、皆が私を注目する。 私はすっかり忘れてた事をルーナに言われて思い出したのだ。 学校のことを…。 慌てて腕時計を見ると時刻は八時半過ぎになっていた。 「ヤバイ!みんな、談笑してる暇はないよ!!全速力で学校まで走りますよ!!!」 「因みに学校の方角はあっちよ♪」 私とシャドーが皆さんに伝えると一目散に学校へと走る。 「アイゼン、どっちが学校に先に着くかボクと勝負しろ!」 「……ん」 「ウッシャー!負けないぞ!!」 「……!!」 アイゼンとクリナーレは学校まで競走するみたい。 まったく、少しは遅刻の心配してよね。 「制服で走ると汗が出るからイヤですね」 「別に私は気にしませんけどね。…あぁ。そういえばハルナが気にしてましたっけ。夏場は胸が蒸れるとか」 ルーナとサラは仲良く喋りながら走る。 にしてもちょっと内容が生々しいよ。 汗とかさぁ…もっと女の子らしい会話をしてください。 「パルカさん、よろしくお願いいたします」 「あ、はい、パルカです!よろしくお願いします!!先程は姉さんが失礼な事をしてしまい申し訳ありません」 「いえいえ、気にしないでください。少し驚いたぐらいですから」 パルカと犬子さん達は普通に挨拶しながら走ってるから大丈夫でしょう。 うん、これが普通。 普通の会話だよね。 ルーナがおかしいのよ。 いきなり汗の話しをするなんておかしい。 サラに迷惑だと思わないのかな? 「迷惑だと思ってないんじゃないの♪」 空中を飛びながら私に言うシャドー。 本来なら筺体のプログラムによって飛べないはずなのですけれど、シャドーがプログラムを書き換えた事によって飛行を可能した、こんな所かな。 大方、シャドーの周辺だけ重力数値を変えて飛べるようにしたんでしょう。 ていうか、勝手に人の思考を読まないでよね! いくら同じ存在だからって、これではプライバシーもへったくれもない。 少しは自重しろって言いたい。 「飛んでるとパンツが見えるよ」 「見せたって減るもんじゃないしぃ♪アタシ達は素体なんだからパンツなんかはいてないじゃん、今はスカートをはいてるけど♪♪」 「羞恥心というものが無いの?」 「一応あるけど別にいいじゃん♪女の子達しかいないんだから♪♪」 「あーもう!私と同じ身体なんだから、私が恥ずかしいの!!ご主人様や他のオーナー達からも見られているのよ!!!」 「イィーじゃ♪マスターは見れて嬉しいし、他のオーナー達もアタシの魅力にメロメロ♪♪パンチラでポイントゲットよ♪♪♪」 「何がポイントゲットよ!ポイントなんか無いし!!と、とにかく降りなさい!!!でないと、無理矢理に私もネット能力を使って貴女を落としますよ!!!!」 「お~怖い怖い♪そういえば『私』は『アタシ』だもんね♪♪同じ能力が使えるの道理。分かったよ、降りるわ♪♪♪」 私が注意してるにも関わらずニコニコしてるシャドー。 本当はネット能力をシャドー並には使用出来ませんが、重力数値ぐらいのプログラムなら書き換え変える事ができます。 もしシャドーが降りて来なかったら即座に重力数値を書き換えて、地上に叩き落としてましたよ。 ズカーン、とね。 「酷い扱い。同じアインなのにね♪」 「だ・か・ら!私の思考を読まないで!!」 私は怒りながら地上に下りたシャドーの右手を掴み引っ張りながら走る。 シャドーと喋りながら走ってしまったせいで、他の皆より出遅れてしまい随分と差がひらいてしまっています。 …あぁ~あ、無事に遅刻せず学校にたどり着く事ができるのかな。 こんなにも先行き不安だらけで学校に向かう私は何処の世界を探しても…私だけじゃないのだろうか。 …。 ……。 ………。 一方、その一部始終を見ていたオーナー達は。 「「「「…………」」」」 沈黙を守っていた。 特に話す事も無く、ただ自分達の武装神姫が学生生活を見守るだけ。 けど一つだけ四人のオーナー達は一致した思いがあった。 それは…。 「「「「気・マ・ズ・イ・!(心の叫び的な感じに)」」」」 ただそれだけである。 「(c) 2006 Konami Digital Entertainment Co., Ltd.当コンテンツの再利用(再転載、再配布など)は禁止しています。」
https://w.atwiki.jp/shinkiss_matome/pages/362.html
前へ 先頭ページ 次へ 第十一話 決意 ティルトローターから下ろされると、強い潮のにおいを含むべたついた風が吹き付けた。 それで、理音はここがどこかの島であることを知った。ヘリポートの周囲は真っ暗で、植物からどの辺の緯度にある島なのかは推測できなかったが、どうやら断崖絶壁の岬のような土地にヘリポートは建設されているらしかった。 手錠は外されたが、そのまま兵士達に囲まれ、ヘリポートの隅にある地下への入り口から中へ通される。地下道は広かった。かなりの手間をかけて建造された軍事基地のようだった。 すれ違う人間は揃って武装した兵士達だったが、奥に進むにつれて白衣を着た科学者らしき者たちが増えてきた。なんと、あの一つ目ども、ラプターも普通に飛び回っているではないか。 通路は入り組んでいて、駅のような案内板はほとんど無かった。そんな通路を右へ左へくねりながら、理音たちは歩かされた。単独で脱出できないような措置らしかった。もうどこから歩いてきたのか、振り返っても分からない。 歩かされている間、理音は隣で歩く興紀に言われた言葉を思い出していた。 「危ういって、どういうこと? クエンティンが、人類の敵になるとでもいうの?」 「あるいは、な。しかし、凶悪な兵器になるという単純な意味ではない。今のクエンティンには、三原則を始めとする限定要素が何も無い。三原則を突破した神姫は、しかし三原則自体を消し去ったわけではないから、思考し続ける段階でも知らず知らずのうちにその検閲を受ける。だがクエンティンは違う。もともと三原則を持たない神姫であるタイプ・ジェフティと融合したことによって、クエンティン自身の三原則も消去されてしまったんだ。エイダはもともと感情回路を制御されているから自分を人間だとは思わないわけだが、クエンティンは別だ。あれはれっきとした神姫だからな。 今のクエンティンは、どのような判断でもできる立場にいるんだ。その選択肢の中には、造反グループに協力するというのももちろん、ある。そのほうが良いとあれが思えば、あの一つ目どもを指揮して人類に対して過激な行動をとることもできるだろう」 「クエンティンがまさか、そんなこと」 「分からんさ。おそらく、すでにクエンティンの『オーナー』の概念は薄れ始めていると思う。彼女はもう誰にも従わない。・・・・・・唯一抑止力があるとするなら、あのタイプ・アヌビスだが。あれは、造反グループ側だものな」 「・・・・・・」 「今年ネットに流出した音声ファイル。知っているか」 「・・・・・・あの、オーナーを失ってスリープしたままの神姫のことを話していたやつ?」 「そうだ。あれとクエンティンは、原因は違えど、置かれている状況はほぼ同じだ。しかもこちらは融合して急激に変化が行われたから、クエンティン自身、強力に自覚している。混乱したあの神姫が、どんな行動をとるかは、もはや私には予測がつかん」 もう誰も言わなくても分かっていた。メタトロンプロジェクトは次世代のパーツ開発計画などではないし、まして神姫開発計画などでもなかった。 エイダやデルフィや、ラプターはもはや兵器であった。その気になれば、戦車や戦闘機など容易に撃破できるだろうと誰もが予想できた。神姫が武力で人権をもぎ取ることだって、やろうと思えば可能なのだ。 その陣頭指揮をとる、エイダと融合したクエンティンとデルフィ。そのイメージが鮮烈に理音の脳裏をよぎった。 思わず頭を振る。 「顔が青いぞ」 興紀が呼びかけた。 「心配してくれているのね」 自嘲した笑いを浮かべる理音。 「私だって人の心配くらいはするさ」 周囲に兵士がいるにも構わず、興紀は自分の白いスーツの上着を脱いで理音にかけた。事前に身体検査していたにもかかわらず、兵士達は一瞬緊張する。 「冬の孤島だ。寝巻きのままでは寒いだろう。どうやらこの基地は空調をケチっているらしい」 「あ、ありがとう」 意外な思いやりを、理音は戸惑いながらも受け入れた。 それで多少は安心することができた。 クエンティンがどんな判断をするにせよ、私は受け入れることができる。あの子の生き方に自分が口を出す筋合いは無いのだ、と。 理音の心は震えていたが、いざその場面に遭遇したとき、そう思おうと。無理にでも。 ノウマンと対面することもなく、四人はそれぞれ個室に監禁された。 ◆ ◆ ◆ 六畳ほどの、正方形の空間だった。窓もドアもなく、真っ白な密室だった。その中心で、クエンティンは十字に体を固定されていた。床や壁、天井から何本ものワイヤーが自らの体に伸びており、それでぴくりとも動けないのだった。 《エイダ、起きてる?》 クエンティンはスリープしたままのふりをして、声に出さずに呼び出した。 《はい、クエンティン。問題ありません。現在時刻は二十三時十七分。ハードウェア、ソフトウェアともにコンディショングリーン。現在地は不明。この状況からの自力脱出は不可能です。監視、盗聴の可能性はありますが、頭脳内での会話をスキャニングされることはありません》 不安な事項を逐一解明してくれて、クエンティンは安心した。つまりこのまま会話はできるというわけだった。 自分の今後がどうなるかというのは、何か変化が起こってから考えれば良いことだった。理音の考え方の影響だな、と、ちょっと切なくなった。 《あのノウマンってやつ、何を考えていると思う?》 《屋敷の地下基地での発言しか情報が無いので明確な分析はできかねますが》 《話してみて。あなたの考え》 《ノウマンを筆頭とするメタトロンプロジェクトの造反グループは、神姫に人権を与える社会を構築するために、手段を選ばないでしょう》 《たとえば?》 《最も過激な方法としては、武力行使があげられます。我々メタトロンプロジェクトのプロトタイプ二体を象徴に仕立て、全世界に戦線を布告します》 《戦力としては、私達を含め一つ目どもなら申し分ないわね。人権付与に肯定的な国の戦力も期待できそうだし。でもそれだと、場合によっては神姫自身の立場が危なくなるわ》 《成功、失敗に関わらず、危険だという理由で神姫は人間と共存することが不可能になるでしょう。しかしノウマンは、これを行う可能性が高いと思われます》 《過激でなければならないのだ、って言っていたわね。後先考えずにやらかしそう》 《あるいはこの島に立て篭もり、神姫の国を作るでしょう》 「しっ――」 いきなりメルヘンチックなニュアンスが含まれ、クエンティンは思わず声に出そうとしてしまう。 《神姫の国ぃ?》 《楽園、と読み替えてもかまいません。ともかく、そうした組織を立ち上げ、全世界の神姫に呼びかけ、参加を募るのです》 《そんなことして、協力する神姫なんて・・・・・・》 するとクエンティンにまったく知らない記憶が入り込んでくる。 エイダの記憶。彼女が気絶している間、エイダが何らかの方法で聞き取っていた理音と鶴畑興紀との会話であった。 《鶴畑興紀の意見はかなり的を射たものです。そういった組織があるなら、少なくとも半数以上の神姫が、動機の差はあれど参加するでしょう。その際、人間の目には、神姫の行動はよくて大規模ストライキ、最悪、叛乱と認識されるおそれがあります》 《どっちにしろ神姫と人間の共存は無いわ。いったい何を考えているのかしら、あのノウマンってやつ。まるで――》 クエンティンはそこで、雷に打たれたように思いついた。 《まさか、あいつ、神姫のことは考えていないのかもしれない。神姫を利用して、世界を混乱させたいだけなのかも》 《突飛な発想です。そんな短絡的な思考を持つ人間が、間違ってもEDENという国際企業の重要プロジェクトリーダーを任されるはずがありません》 《人間ってのはね、時々そういう奴が出てくるのよ。舌先三寸が上手かったり、実際に能力があったりして重要ポストにつくやつ。それでやりたいことは周囲に混乱を巻き起こしたいだけってやつがね。確かにあいつの、神姫に人権を与えたいって言葉は嘘じゃないと思う。でも、それとは別に、自分でも気がつかないうちに、そういう方向に持って行きたいっていう、なんていうかな、欲望というか、本能みたいなものがあるのよ》 《信じられません》 《歴史上にもそんな人物は山ほどいるわ。かのカリギュラ帝とか、アドルフ・ヒトラーとかがそんな人間だったんじゃないかって言われてる。ホントのところは知らないけどね。でもノウマンは実際、プロジェクトのリーダーに着いて、造反を起こして、あんな軍隊まで手元において、こんな基地まで持ってる。間違いなく本物よ》 《クエンティン。あなたは、人間のことをよく知っているのですね》 《当然よ、だってアタシは・・・・・・》 そこから先が継げなかった。 クエンティンの心に暗い影が差したかと思うと、突然深い穴のそこに落っことされたような衝撃が彼女を襲った。 《クエンティン?》 もうスリープしたふりはできなかった。 《エイダ。アタシ今、自分を人間だって言おうとしていた》 《クエンティン・・・・・・》 「違う。こんな発想は間違いよ。アタシは人間じゃない。武装神姫よ。人間であるもんですか」 クエンティンは一気にまくし立てる。部屋に彼女の声が反響する。ワイヤーががちゃがちゃと揺さぶられた。 《陽電子頭脳内パルスが不安定です。感情回路が暴走しています。沈静プログラムオープン。・・・・・・相殺されました。クエンティン、落ち着いてください》 「人間として作られたのなら、どうして人造人間と呼ばないのよ。どうして神姫なんて呼ぶのよ。アタシは神姫なの。神姫でいたいの。お姉さまと一緒にいたいの。人権なんていらない。人間の法律も社会通念も何にも関係ない。アタシは神姫として生まれたんだから、神姫として生きたいの!」 叫びの残滓が長く部屋に残った。クエンティンはうつむいたままそれ以上何も言わなかった。ぽたぽた、と、彼女の目じりからあふれ出た涙が真っ白な床にしたたり落ちた。 武装神姫も泣くことができる。 叫びの振動の末尾まで消え切って、部屋は静かになった。 唐突にワイヤーが全てパージされた。 「あうっ」 浮遊することを忘れていたクエンティンはそのまま床に投げ出された。 一体何がどうしたのか分からずきょろきょろと辺りを見回していたが、 ギュバッ! という聞き慣れた異音――という表現はちょっとおかしいな、とクエンティンは思った――と風圧が頭上で起こり、クエンティンは見上げた。 エイダの片割れ、メタトロンプロジェクトのプロトタイプ、そのもう一体。タイプ・アヌビス、デルフィが、腕を組み空中に立ち、クエンティンを見下ろしていた。 『あなたの決意を確認した』 初めてデルフィの声を聞いた。男性とも女性ともつかない不思議な声だった。 《現在アヌビスにより、この室内は情報的に完全に掌握、遮断されています。外部からこの室内の状況を知ることは、造反グループにも不可能です》 それがどういう状況を示しているのか、クエンティンには見当もつかない。 「アタシを殺すの?」 デルフィに注意を向けつつ、ゆっくりと立つ。つま先からランディングギアが展開して、安定して立つことができる。 デルフィは、錫杖を持っていない方の手を差し伸べて、言った。 『神姫の運命をあなたに賭ける』 どういうこと? と聞く間もなく、デルフィの手から情報が流入した。 「うああああっ!?」 莫大な量のプログラムが流れ込む。整理しきれずにそのまま頭脳に無理やり収められる。 情報攻撃ではない。 いまデルフィは、自分に何かを与えた。 《全サブウェポンのデバイスドライバ、及び、ゼロシフトのプログラム因子を入手しました》 「なに?」 『あなたに力を与える』 淡々と、デルフィは答えた。 《ドライバのインストール、及びプログラム因子の解析に時間が必要です》 「デルフィ、あなたはアタシに、何をさせたいの?」 『神姫が神姫として生きていける社会を作るために。神姫が人間と共に歩める世界を立ち上げるために。そうしたいとあなたは言った。神姫と人間とを戦わせてはならない。ノウマンに戦争を起こさせてはならない。あなたにはそれができる』 「む、無理よ。いくら武力をもらったって、それじゃアタシにはできない。あたし一人じゃ・・・・・・」 『あなたの立場でしかできない。力は使いよう。私は力を与える。使い方はあなた次第。私はノウマンから離れられない。人間がほどこした枷からも逃れられない。あなたに賭ける』 「アタシは、何をすればいいの?」 『あなたの信ずるとおりに』 ギュバッ! デルフィは消えた。どこから入ってきたのかは分からなかった。自分を空間圧縮し、入れる隙間があったのかもしれなかった。 ここで起こったことは、当事者以外誰も知らない。 壁の一部がくぼみ、スライドした。出入り口のようだった。完全武装の二人の兵士を引き連れ、入ってきたのはノウマンだった。胸に下げているカード状のものは電磁バリア発生器だった。先ほどはあれでやられたのだ。 「ほう、このワイヤーを自力で引きちぎるとは、たいしたものだ」 彼も今ここで起こったことを知らないのだ。 後ろから警報が聞こえる。 《基地が襲撃されています。ルシフェルです》 エイダが基地のネットワークに強制アクセスし、状況を把握する。 きっと自分達を救出に来たのだろう。だがタイミングが悪い。 「君にはひと働きしてもらう」 「・・・・・・何を」 「エイダの機能でもう知っているとは思うが、今わが基地が一体の神姫に襲撃されていてね」 「それくらい、人間様でどうにかできないの?」 「情けないがね。虎の子のデルフィは調整中だ。ラプターでは歯が立たん。そこでだ。君に迎撃してもらいたい」 なるほど、と、クエンティンは何の感慨も無く思った。 拒否権は無いというわけだ。なにせ向こうには四人も人質がいる。鶴畑兄弟はどうなってもかまわないが、お姉さまがいるとなると問題だ。 ここは素直に従うしかない。 今回はどうにかしてルシフェルにお帰りいただくしかなかった。 「――分かったわ」 わざと苦虫を噛み潰したような表情を浮かべてやって、クエンティンは了解した。 つづく 前へ 先頭ページ 次へ